日本株をけん引してきた半導体・自動車・電子部品業界。株価が乱高下するジェットコースター相場でも強い企業はどれなのか。ダイヤモンド編集部は、半導体・自動車・電子部品業界の238 社を対象に、研究開発や設備投資に積極的な企業を高く評価する「生き残り力」ランキングを作成した。特集『AI半導体 エヌビディアvsトヨタ 頂上決戦』の#10では、動乱相場の今こそ仕込んでおきたい銘柄リストをお届けする。併せて、将来の成長余地が大きいのに株式市場で評価されていない「投資魅力度」項目を指標として追加。中長期的にお宝企業に化けそうな企業を炙り出した。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
七つの指標で将来有望企業をピックアップ
新たに「投資魅力度」項目を追加
日経平均株価は歴史的な暴落から一転、急上昇を見せた。米国景気の減速懸念、テック関連株の下落、円高という三大要因が絡んだジェットコースター相場。先行きを見通すのは難しく、市場が落ち着きを取り戻すには一定の時間を要することになりそうだ。
それでは、これまで日本株をけん引してきた「半導体・自動車・電子部品」業界の株価はどのような動きを見せるのか。とりわけ、半導体関連企業は生成AI(人工知能)ブームの波に乗り、株価が高騰を続けていただけに、今回の暴落ショックの影響は大きかった。
過去最高値を付けた7月11から8月6日までの日経平均株価の下落率は17.88% 。とりわけ半導体関連企業の落ち込みは激しい。同期間の下落率で見ると、ルネサスエレクトロニクス▲34.3%、東京エレクトロン▲32.4%、ソシオネクスト▲36.4%、イビデン▲32.2%と、30%以上の落ち込みを記録している。
円安が利益の底上げに直結する輸出関連企業も同様で、トヨタ自動車▲23.3%、日産自動車▲26.6%、村田製作所▲24.8%と沈んでいる。
当座のところは、乱高下相場に一喜一憂するよりも、中長期の視点で成長余地の大きい企業に粘り強く投資する方が得策だといえるだろう。
実際のところ、生成AIがもたらす技術革新はすさまじく、生成AIが産業の中核を握るトレンドは変わらない。高機能半導体の重要性は高まるばかりで、AIの計算に使う米エヌビディアのGPU(画像処理半導体)の争奪戦は激化している。
そのため、エヌビディアにどう対峙するか。あるいは、エヌビディア経済圏にどう食い込むかが世界のテック企業の生命線になりつつある。エヌビディアがもたらす「産業構造の激変」が、インターネットやスマートフォン以来だといわれるのはそのためだ。
製造業大国ニッポンも、この産業構造の激変を勝機と捉えて突き進むより、生き残る道はない。ハードウエアで戦ってきた国内製造業のソフトウエアシフトは必須だ。
中長期な視点で見て、潜在的な成長余力の大きい企業はどこなのか。ダイヤモンド編集部は、設備投資や研究開発投資を機動的に実行できる「財務力」と「マネジメント力」を兼ね備えた企業を将来性の高い企業として評価。独自指標を駆使して「生き残り力」ランキングを作成した。
ランキングを作成するに当たって、重要視したのは以下の3タイプのデータ(七つの指標)だ。
●企業の基本的な稼ぐ力を表すデータ……企業を変革するにも「先立つもの」が必要。本業でキャッシュを稼いでいる企業を高く評価した。
【指標】年平均売上高成長率、営業利益率
●将来への投資意欲を表すデータ……現状の事業領域に甘んじることなく、将来有望な新しい領域に向けて果敢に研究開発費を投じている企業を高く評価した。
【指標】研究開発費、売上高研究開発費率、フリーキャッシュフロー
●事業の拡大意欲を表すデータ……製造業にとって設備投資の増減は生命線。設備投資をしっかり実施している企業を高く評価した。
【指標】設備投資額、売上高設備投資率
これらの七つの独自指標を用いて、企業の実力値とポテンシャルを総合的に評価しランキングを作成した。
また、今回は新たに「投資魅力度」という項目を設けた。投資魅力度とは、上記7指標から算出した総合得点をPBR(株価純資産倍率。8月6日時点)で割った数値のことだ。PBRは株価が1株当たり純資産の何倍であるかを示しており、一般的にはPBRが低いほど株価は割安だと判断される。
つまり、投資魅力度の数値を比較すると、将来の成長性は高い(総合得点は高い)のに株式市場での評価は低い(PBRは低い)銘柄を炙り出すことができるのだ。当座の動乱相場に惑わされることなく、中長期的な有望企業を見極めることに役立ててほしい。
それでは、次ページで半導体・自動車・部品株「動乱相場にこそ仕込みたい238銘柄」ランキングの結果を見ていこう。