総論は示しても各論を示すリーダーは少ない
――「ムダが生まれにくいゴールの言語化のコツ」はありますか?
木暮:「ハワイに行く」などの単純な話なら、さすがにどのリーダーもゴールの示し方を間違えないと思います。しかし、「商品の売り上げを上げる」などビジネス的なテーマになったら難しいんです。
たとえばリーダーとして「商品の売り上げを上げよう」というゴールを示したとき、それは総論としては伝わっても、そこにたどり着くための各論は非常にあいまいなままです。
おそらく皆さん、「商品の売り上げを上げる」ということを考えたとき、「じゃあ営業資料を作ろう」とか「じゃあクチコミを起こすためにSNSで発信しよう」とか、いろいろなことをやりますよね。それが正解なのか分からないまま。
だけどリーダーなら、「売り上げを上げよう」ではなく、「今期は既存のお客さんに2倍買ってもらう。まずはそこに向けて動きましょう」などのより明確なゴールを示すこともできるんです。
そして、その作戦が正しいかどうかは、リーダーが責任をとる。それがリーダーの仕事です。
――それもリーダーの役割ですもんね。
木暮:だからリーダーはまずは、「営業資料とかいらない」「SNSもやらなくていい」とメンバーに伝える。それよりも既存のお客さんに2倍買ってもらうために単価を2倍にするか、あるいは内容量を2分の1にするかなど、ゴールにたどり着くための道を明確化する。
そして、「そのためにはこれこれが必要だからあなたはこれを担当してやってください」、「あなたはこっちを担当してこれをやりなさい」といった感じで、各ポジションの人に動き方を説明すれば、部下たちはその仕事だけやりますから、ムダな労働は生まれなくなるわけです。
――各論、つまりゴールに向かっての動き方まで示すのがリーダーなのに、日本にはそういったリーダーがあまりいない気がします。
木暮:それをやらないと、本当は組織として成り立っていないはずなんですけどね。でも前回(記事:「自分で考えて動ける部下が理想」はリーダー失格!リーダーの本来の役割とは?)お話ししたように、「自分で考えて動け」とか「経営者目線を持て」とか、丸投げしているリーダーが非常に多いです。
そもそも“経営者目線”という言葉もすごいあいまいですけど。「経営者目線になろう」って言われても分からないですよね、何をすればいいのか。だけどそんなことだけ言って言語化したつもりになっているというのが、残念ながら“リーダーあるある”だと思います。