「納税」制度なのに、なぜ「寄付」扱い?
ふるさと納税制度がスタートしたのは2008年5月のこと。今では「豪華な返礼品がもらえるお得な制度」のイメージが定着しているが、そもそもは、地方自治体間の税収格差を解消しようという政府内の議論から生まれたものだ。
高度経済成長期以来、多くの人が職を求めて故郷を離れ大都市に移り住んできた。当然ながら、移住者たちは住民票のある自治体に住民税を納める。これが何十年と繰り返される中で、いつしか大都市と地方都市との間に大きな税収格差が見られるようになった。
その解消策として、06年に福井県の西川一誠知事(当時)が「故郷寄付金控除」制度を提案(※1)。政府は07年に「ふるさと納税研究会」を設立し、西川氏も後にメンバーとなった。そして、08年4月には、地方公共団体への寄付金税制見直しを盛り込んだ「地方税法等の一部を改正する法律案」が衆議院で可決され、現在のふるさと納税の枠組みが出来上がった――。大ざっぱに振り返れば、こういうことになる(※2)。
一つ気になるのは、「ふるさと納税」という名称を用いながら、税制上は「寄付」として扱われる点だ。なぜ、そうなったのか。
そもそも課税権は、国税庁と自治体のみに認められる権限だ。住民税であれば、居住地の自治体にのみ課税権が認められている。だから、納税者は住民票のない自治体から課税されることはない。裏を返せば、たとえ子ども時代を過ごした自治体に “恩返し”をしたいと納税を申し出ても、税として受け取ることはあり得ないのだ。
そこで考えられたのが、「寄付金税制」を活用する方法である(※3)。地方税法は、自治体への特定の寄付に関する「寄附金税額控除」を規定している(第37条の2、第314条の7)。つまり、自治体(非居住地)に寄付をした際は、居住地の自治体に納める住民税から一定の控除が受けられるという仕組みで、これがふるさと納税の法的根拠となっている(※4)。
※1 ふるさと納税制度について(福井県/PDFに遷移)
※2 平岡秀夫衆議院議員はじめ、同じ時期に複数の国会議員や識者がふるさと納税につながる制度の提案を行っていたため、発案者には諸説あり
※3 ふるさと納税研究会報告書(総務省)
※4 所得税の寄付控除は、所得税法第78条に基づく