金の現物の取引価格は過去10年間で大きく上昇した。経済が不安定な時期にも比較的安定した投資商品といわれる金の現物だが、実は税制上の優遇措置も魅力の一つだ。税理士の中には、相続税対策に「純金の仏具」を活用できるという人もいるが、それはどういうことなのか。金投資と税について考えてみよう。(ZEIKENメディアプラス 代表取締役社長 宮口貴志)
純金のお鈴(りん)には
相続税がかからない!?
もうすぐお盆(旧盆)の時期がやって来る。筆者の周囲でも「ふるさとに帰省してお墓参りを」という声が、ここ数日ちらほらと聞こえてくるようになった。日本では先祖を仏教式でお祀(まつ)りする家が多い。知人の一人は、実家に帰省して仏壇に手を合わせていると、まだ小さかった子どもが「お鈴(りん)」を面白がって何度もたたき、おばあちゃんに叱られた思い出を懐かしそうに語っていた。
仏壇・仏具には、高級素材と高い技術で作られた大変高価なものもある。例えば、純金製のお鈴などは1つ1000万円近くするものも売られている。仮にこのように高価な金のお鈴を相続した場合、普通に考えれば骨董品や宝石と同じように、相続税の課税対象になると思うだろう。ところが……仏具には原則として相続税が課税されないのである(相続税法第12条*1)。
実際、税理士の中には「被相続人の生前に純金の仏具を購入して相続税対策を」と助言する人もいる。もちろん「金」そのものは課税対象だが、金で作られた「仏具」は税制に照らせば非課税ということになる。ただ、相続税対策にはなっても、相続後のことまで考えると……。詳細は、後段をご参照いただきたい。
前置きが長くなったが、今回は「投資対象としての金と税制」について考えて行きたいと思う(*2)。売却して利益が出たときの所得税、売却時に発生する消費税、そして「金の仏具」による相続税対策。これらの視点から、金の他の投資商品との違いや特徴を整理してみよう。
*1 「次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。 二 墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」 参考:相続税がかからない財産(国税庁)
*2 投資商品としての貴金属には銀やプラチナなどもあり、扱いは金と同様