年末調整を会社の年末恒例行事とやり過ごすことなかれ。これは給与所得者にとって貴重な節税対策の一つ「保険料控除」申告の一大チャンスなのである。今回は多くの人が加入する「生命保険料控除」に絞ってその仕組みをひもとき、新旧保険の違い、控除の上限や年末調整に間に合わなかった場合の対処法など、知っておきたい生命保険料控除の知識を簡潔にまとめてお届けする。(ZEIKENメディアプラス 代表取締役社長 宮口貴志)
年末調整の生命保険料控除は住民税にも
年末調整の季節である。企業や役所に勤める給与所得者なら、「12月の給与で税金がいくら戻ってくるだろうか」と期待しながら(逆に、不足分を徴収されることもあるが…)「保険料控除申告書」に保険会社から送られてきた控除証明書の保険料を転記している最中ではないだろうか。ちなみに、個人事業主、給与所得が年間2000万円以上の人、給与を2カ所以上からもらっている人、副業収入が年間で20万円超ある人の保険料控除には確定申告が必要だ。
今回は、給与所得者が年末調整で「生命保険料の控除」を申告する際に知っておきたい控除の仕組みについて触れてみたい。
日本には加入が義務付けられている社会保険制度がある一方で、約80%の人が民間の生命保険に加入しているという調査結果がある(出所:生命保険文化センター)。民間の生命保険は、より多額の遺族保障や公的医療保険適用外の医療サービスへの保障を得る目的で多くの人が利用している。
生命保険の控除制度は、加入者の保険料負担の一部を補てんする趣旨からつくられた。その歴史は意外に古く、今からさかのぼることちょうど1世紀、1923(大正12)年の所得税法改正で初めて生命保険料控除制度が創設され、翌24年から施行されている。(※1)
意外といえば、生命保険料の控除は住民税にも適用されていることをご存じだろうか。年末調整で行う保険料の控除申告は、あくまで国税である所得税の控除申告だ。自分で申告書面を埋めていくから実感がわくのだが、地方税である住民税の場合は、税務署が納税者の住民票のある自治体と年末調整の結果を事務的に共有し、自治体はそれに基づいて生命保険料を控除する。
しかも、所得税の場合は計算期間が1~12月のため、保険料を控除した結果税金を払い過ぎていれば、12月の給与に還付分が振り込まれる。一方、住民税は6月~翌年5月で計算するので、翌年6月以降の給与から“知らない間に”控除が実施されている。だから、たいていの人は「税金が安くなった!」という実感を持っていない。詳細は後段で述べるが、住民税からの控除も結構な節税になるので、6月はみなさんにも一人静かに喜びをかみしめてもらいたい。
※1 はじめての保険料控除(国税庁)