PIXTA「個人」も、収入が一時的に増えれば税務調査の対象になる可能性が……(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「個人」に対しても税務調査は行われる。富裕層だけでなく会社員など給与所得者でも、所得税還付や副業収入などで一時的に所得が増えれば、対象になることは珍しくはない。厳格な調査が実施される昨今、税務署は調査に際してどのように個人にアプローチしてくるのか。また、調査はどのような形で終結するのか。いざという時のため、税務調査のプロセスを大まかに理解しておこう。

税額調査の告知プロセスはなぜ変わった?

 当連載では、これまでに二度(第1回第6回)にわたって「個人が対象になる税務調査」を話題に取り上げたが、予想以上に関心が高いことが分かった。そこで今回は、個人の税務調査に関して最小限知っておきたい実務面の知識を整理しておきたい。

 以前もお話ししたように、税務調査のターゲットとなるのは、必ずしも富裕層だけではない。給与所得者であっても、「会社からの給料以外に収入がある人」で「年間20万円を超える副業所得がある人」「資産運用や相続などで臨時収入を得た人」など、たまたまその年に給与以外の収入が増えれば、税務署の調査対象リストに載る可能性はある。

 また、給与所得の高い人が個人事業主の申請をしており、その年の個人事業収支が赤字だった場合も不正還付を疑われ、調査対象になりやすい。このほか、相続をした人なら、相続財産が「現金や有価証券」や「国外にある資産」である人が対象になりやすいという。

 特に、相続に詳しい税理士は、一般の我々が思うほど決して多くはない。いざ調査が入ることになっても、相談できる専門家がすぐに見つかるとは限らないのだ。加えて、調査の際には、納税者に受忍義務(※1)が課せられるため、ある程度の知識を得ておくことが必要となる。

 まず、税務署からの最初のアプローチについて。念のため、自宅や職場に調査官が何の前触れもなく押しかけてくることはまずないことを申し上げておきたい。突然やってくるのは、現金商売をしている店舗で現金隠しが疑われる場合や、国税局査察部の職員(いわゆるマルサ)が悪質な脱税行為を強制調査するときだけである。

 それ以外の調査では、税務署からあらかじめ二段階の通知が行われる。最初は、電話による「調査通知」があり、ここで「実地調査を行う旨」「調査対象期間」「調査対象税目」の3項目が告知される。しばらく時間を置いて、書面での「事前通知」がある。ここでは、上記3項目を含む11項目(※2)が通知され、これによって「税務調査の“正式な”スタート」が告知されることになる。

 実は、調査通知が始まったのは、2017年1月1日以降に申告期限を迎える国税調査からだ。なぜ、「調査通知」が行われるようになったのか。その結果、何が変わったのか。

※1 税務調査官の質問検査権に基づく質問に対応する義務。正当な理由なしに拒否できない
※2 (1)実地調査を行う旨 (2)調査対象期間 (3)調査対象税目 (4)調査開始日時 (5)調査場所 (6)調査目的 (7)調査対象となる帳簿書類等 (8)納税者の氏名、住所 (9)調査を行う職員氏名・所属官署 (10)日時・場所は変更が可能である旨 (11)通知がされなかった事項についても非違が疑われる場合には調査が可能であること