他人事ではない!相続税の税務調査は忘れた頃にやってくる…! 写真はイメージです PIXTA他人事ではない!相続税の税務調査は忘れた頃にやってくる…!  (写真はイメージです)Photo:PIXTA

「相続税調査」といっても、なかなか実感が湧かないかもしれない。だが、あながち他人事でもなく、「忘れた頃にやってくる」ことも多いという。コロナ禍とともに実地調査件数こそ減ったが、2020年度以降の調査には別の傾向が目立つようになった。税務調査は「年間のうち7月から12月が厳しいのはなぜ?」「調査官にはノルマ件数がある?」「どんな人が狙われやすい?」 ――国税局資産税部門出身の税理士の解説を交えながら、そんな疑問への答えや実際の調査の進め方などを紹介する。(ZEIKENメディアプラス 代表取締役社長 宮口貴志)

7月から12月末は厳格な実地調査

 7月は税務行政の新年度開始の月に当たる。2024(令和6)年「事務年度」は、同年7月1日から25年6月末日まで。職員の異動もこの時期に行われ、相続税などを扱う資産税部門の調査官たちは気持ちも新たに税務調査に着手する。ところで、この期間のうち「7月から12月末までの実地調査は厳しく行われる」ということをご存じだろうか。

 税務署で相続税調査などを行う「資産税部門」の調査官1人当たりの“ノルマ”調査件数は、通常年間で24件程度、新人調査官は15件程度といわれている。税務調査というと、国税局査察部(いわゆる“マル査”)の査察官が突然押し掛けてくるイメージを描きがちだが、マル査以外の税務調査はそれとは違う。一般の税務調査は、納税者の協力を得ながら申告漏れなどのミスを見つけていくことが目的だ。

 手順としては、最初に税務署内で「机上調査(準備調査)」を行って調査対象を絞り込み、その後、必要な場合のみに納税者をじかに訪問して「実地調査」を行う。1件の調査に要する準備時間と労力を併せて考えると、平均して月に2件の調査というのは結構きつい。

 特に相続税の場合、申告期限は「相続開始を知った日(*1)の翌日から10カ月」なので、申告内容に何らかの問題があった場合、納税者側からすれば、実地調査は「忘れた頃にやってくる」ことが多いのだ。

 なぜ、7月から12月の実地調査は厳しいのか。調査官はどこに目を付けるのか。かつて国税局や税務署の資産税部門で多くの相続税調査を経験し、現在は退官して税理士として活動するA氏の解説も交えながら、ここ数年の相談税実地調査の動向と一緒に検証してみよう。

*1 被相続人の死亡日とは必ずしも一致しない。例えば、相続人が被相続人の死亡を知ったのが死亡から30日後であれば、「死亡後31日目から10カ月」が申告期限となる