日本を代表するメディアの共同通信社が、本年度内に複数の地方支局で記者を削減することが分かった。全国紙が地方の記者を減らす中、ローカルニュースの取材力低下が危惧される。突然の告知に、現場では困惑が広がる。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
2028年度までに
地方支局の人員を20~30人削減
ダイヤモンド編集部が独自に入手した共同通信社の労働組合の資料によると、記者を減らすのは秋田、山形、津、岡山、松山、佐賀、鹿児島の7支局と北九州分室。それぞれ1人ずつ減らし、仙台、名古屋、大阪、福岡の4支社に1人ずつ増員する。11月1日に社が対象支局などに通知した。これに併せて、2028年度までに地方支局の人員を20~30人削減するとも明らかにした。
共同の中堅記者は「もはや通信社とは呼べなくなる」と嘆く。国内外に張り巡らした取材網を活用したきめ細かな取材が共同の強みだ。減員が実現すれば、岡山と鹿児島は記者が3人、それ以外は2人となる。別の記者は「県全域をカバーするなら最低限、県庁、県警、県庁所在地の市役所に1人ずつ記者が必要になる。『2人支局』(への減員)はやり過ぎだ」と指摘する。
このままでは、地方紙をはじめ共同の加盟社に、必要なニュースを届ける体制の基盤が揺らぎかねない。事実、現場の記者からは今回の減員方針に対して「見切り発車」「理不尽だ」との批判が相次ぐ。
共同労組は減員方針に「同意なく実施するな」と要求。しかし11月21日の団体交渉における回答は「柔軟に対応するが、本年度内には着実に実施する」というもので、減員ありきの姿勢を覆せなかった。
なぜ共同は、同社の存在意義ともいえる取材体制の縮小を厭わないのか。実は背景に「加盟社側の圧力があった」と関係者は明かす。