共同通信社が大リストラに着手した。定年退職などによる自然減で人員の2割減を目指すという。同社は地方紙などの加盟社が支払う「社費」を収入源とするため、販売部数減とコロナ禍に見舞われる地方紙の窮状を受けたものだ。ただ、現場からは今後の賃金カットへの不安だけでなく、「地方紙の奴隷」とさえ表現されるほど煩雑な業務の見直しを訴える声が上がる。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の#4では、沈みゆく地方紙と運命共同体にある巨大通信社の危機をレポートする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
関電金品授受問題スクープの快挙の裏で
2028年度までに300人削減計画が
関西電力の首脳が、福井県高浜町の元助役から約3億2000万円の金品を受け取っていた問題を最初に暴いたのは、共同通信社だった。
共同通信は昨年9月26日にこのスクープ記事を配信。主要メディアが後追いして大きく報じ、関電の社長や会長は引責辞任。現経営陣から損害賠償を請求される事態に発展した。
これにより、共同通信は2019年度の新聞協会賞を受賞。女子柔道界内部の暴力やパワーハラスメント問題をスクープして、13年に受賞して以来の快挙だった。
共同通信は国内外の主要都市に取材拠点を持ち、ニュースや写真、最近では映像を国内外に配信する日本を代表する通信社だ。経営難にある時事通信社をはるかにしのぐ強固な体制を誇っている、はずだった――。
「社費12億円引き下げ 正職員、28年度までに300人減」――。
6月下旬、労働組合からのメールで、社員にこんなリストラ計画が伝えられた。
社費とは、共同通信に加盟している「加盟社」が共同通信に支払う代金のこと。加盟しているのは、NHKや民放各社、地方紙、日本経済新聞社や毎日新聞社、産経新聞社など一部の全国紙やラジオ局といった報道機関だ。
とりわけ地方紙は、自身の販売エリアである各都道府県内とその周辺には取材網を張り巡らせているが、その他のエリアは東京や大阪に支社を置く程度。海外に取材拠点を持つのは、中日新聞社や北海道新聞社など一部の有力ブロック紙に限られる。
また、東京支社といっても多くの地方紙の場合、地元に関連する東京でのニュースを取材するのが精いっぱい。国政や経済担当の記者を独自に配置しているのもまた、中日新聞の一角である東京新聞や一部のブロック紙だけである。
そこで、多くの地方紙が取材網を持たない他県や海外、東京の政治経済の中枢に関する記事については、共同通信の記事の配信を受け、これを紙面に用いるのだ。