今は「みんな仲良く」が正義とされる時代だ。会社や学校から「競争」が排除され、業績や成績を人と競い合うことがなくなった。一見すると居心地の良い環境だが、競争を通じた「学び」や「成長」の機会を失ったともいえる。かつて「ホワイト企業」と呼ばれた職場が若者から「ゆるブラック」と揶揄されるように、生ぬるい環境に危機感を抱いている人も少なくない。
そんな状況を打破するヒントが、「ライバル」の存在にある。そう話すのは、金沢大学教授の金間大介さんだ。モチベーション研究を専門とし、現代の若者たちを分析した著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』が話題になるなど、メディアにも多数出演している。その金間さん待望の新作『ライバルはいるか? ー科学的に導き出された「実力以上」を引き出すたった1つの方法』が刊行。社会人1200人に調査を行い、「ライバル」が人生にもたらす驚くべき価値を解明した。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、「ライバルがもたらす効果」について紹介する。
「敵」としてのライバル
ある人は「ライバル」と聞くと、こんなイメージを抱く。
・相手を目の敵にする
・常に自分と相手を比較する
・相手が何を考えているのかわからなくなり、怖くなる
・相手に意識が集中するあまり、周りが見えなくなる
・お互いを疲弊させてしまう
この人には負けたくない。絶対に勝ちたい。そんな風に思うがあまり、必要以上に勝つことを意識してしまい、周りが見えなくなってしまう。
そして、ライバルと比べることばかり考えてしまい、どんどん自信を失ってしまう。そんな過度な他者比較は、ときに精神的な苦痛を伴う。
さらには、行き過ぎた勝利至上主義によって、ライバルの足を引っ張るという行動につながることもある。たとえば、仮にライバルにとって有益な情報を手に入れたとしても、それを秘匿するなど。そうしないと、結果的に自分が不利になってしまうからだ。
また、自分がそう考えるということは、もしかしたら相手も同じように考えているかもしれないと、疑心暗鬼になる。そんな思考が頭から離れなくなり、ライバルに対する信頼を消失させる。何を考えているのかわからない。そう悩んで、ついには相手の存在そのものを恐れてしまう。
あの人が怖い。
こういったライバル像を持つ人は多い。
まさに「敵」としてのライバルだ。
「ヒーロー」としてのライバル
他方、ある人は「ライバル」をこうイメージするかもしれない。
・相手に勝つことを目標にしている
・お互いの存在を認めている
・お互いが高め合っている
・より一層努力している
・お互いに協力し合っている
この人には負けたくない。絶対に勝ちたい。そんな風にライバルに勝つことを目標としつつも、お互いの存在を認め合い、より高みへ向かうことに対して協力を惜しまない。
あの人はすごい。
心からそう思えるあの人も、もしかしたら自分のことを同じように思ってくれているかもしれない。そう思うと、相手からの協力依頼は何よりも嬉しい。「ちょっと教えてほしいことがあるんだけど」。そんな相談そのものが、まるで大きな勲章のようで、気分が高揚する。
それと同時に、「期待に応えられなかったらどうしよう」という不安が自分の心を支配する。だからこそ、手を抜かずに頑張る。
そんな関係だから、お互いに今手掛けていることに全力投球していることをよく知っている。だからこそ、相手が成果をあげたときは惜しみなく賞賛する。そして、そんな輝かしいライバルの姿を脳裏に焼きつけ、自分も次の挑戦や成長へと意識を向ける。
あの人がいてくれて本当に良かった。
そんなライバル像を抱く人も少なくはない。
まさに「ヒーロー」としてのライバルだ。
あなたにとっての「ライバル」は、どちらのイメージに近いだろうか?