米議会予算局(CBO)によると、直近の2024会計年度(9月30日まで)の連邦政府歳出は6兆7500億ドル(約1028兆円)だった。例えば、通りを歩いて見かけた人全員に2万ドルずつ配るとしよう。これを3億3700万人の国民全員に行えば、米国の歳出額に相当する。

 実業家のイーロン・マスク氏は、バイオテクノロジー企業創業者のビベック・ラマスワミ氏と共に、ドナルド・トランプ次期大統領の歳出削減の取り組みを主導するよう任命された。この取り組みは新設される「政府効率化省(DOGE)」を通じて行われる。

 マスク氏は政府の支出を少なくとも2兆ドル削減できるとの考えを示しているものの、それが年間なのか、あるいは一定期間における数字なのかは明言していない。DOGEは連邦政府の正式な枠組みの外で運営され、意思決定権限は持たない。

 一般的に政府の財布のひもを握るのは大統領ではなく議会だが、トランプ氏はこれを変える意向を示している。米政府支出の多くは義務的支出とされており、毎年の議会の承認を必要とせずに給付金が支払われている。

 政府の大きな支出項目は、国民への医療提供や退職者向けの資金だ。CBOが11月に公表した推計によると、直近の会計年度では社会保障給付は1兆4500億ドルだった。メディケア(高齢者向け公的医療保険)とメディケイド(低所得者向け医療保険制度)関連の支出は計1兆4900億ドルとなった。

 トランプ氏は社会保障とメディケアには手を付けないと公言している。メディケイドは削減の対象となる可能性があるが、政治的に難しいかもしれない。CBOは6月の時点で、24年度のメディケイド給付の56%が高齢者、視覚障害者、障害者向けになると推計している。多くの介護施設がこの医療保険制度から相当な収入を得ている。

 これらの義務的経費の支出額は増加している。医療費の上昇と、高齢化する人口が社会保障とメディケアを受給していることが背景にある。24年度の義務的支出は、米国の国内総生産(GDP)の15%近くに相当する規模となった。20年前の約10%から増加し、今後も増え続けるだろう。

 このほか支出が小規模な義務的経費には、軍関係者と連邦職員の退職給付金、里親制度と養子縁組に関連する各州への支援などが含まれる。

 これらの義務的支出の項目に加えて、米国は巨額の債務に対する利払いも行わなければならない。24年度の純利払いは約9500億ドルだった。義務的支出と利払いを合わせると、連邦政府支出の約4分の3に相当する。

 残りは裁量的支出で、議会が毎年採決を行う。これは主に二つの項目に分かれる。一つ目は国防費だ。軍装備や基地の維持、空母から食堂の食事に至るまであらゆるものの購入、現役軍人約140万人への給与などに費やされる額は、CBOが6月に公表した推計によると約8500億ドルだった。

 二つ目は国防費以外の裁量的支出で、その他全てが含まれる。内訳は米航空宇宙局(NASA)向けの資金、農業関連、住宅支援などで、支出は推計約9500億ドルだった。

 歳出削減の取り組みは通常、国防費以外の裁量的支出を対象とする。24年度の米国の支出額では、推定で1ドル当たり約14セントに相当する。

 マスク氏とラマスワミ氏は、連邦職員の数を削減することである程度のコストカットが可能だと主張している。だが給与は全体の支出のほんの一部にすぎない。

 行政管理予算局によると、24年度の連邦職員の給与と手当にかかった費用は推定3840億ドルだった。対象となる職員は、大統領からクリーブランドの航空管制官、ワシントンの労働省統計官、ヒューストンの食品安全検査官、イエローストーンの公園自然保護官に至るまで、多岐にわたる。軍関係者も合わせると金額は5840億ドルに達する。

 郵便サービスを除くと、行政府の文民の職に就く連邦政府職員は約230万人に上る。そのうち約5分の1が退役軍人省で働いている。

 連邦予算の大部分は、直接または間接的に国民に支給される給付金に充てられており、これは労働者からの直接的な拠出によって成り立っている。社会保障局から退職手当、障害手当、追加保障、遺族給付を毎月受け取っている人は約7300万人いる。

 メディケアとメディケイドの加入者はそれぞれ約6800万人と約7200万人だ。いずれも米国の多くのコミュニティーに相当な所得支援を提供している。

 また、政府は商品やサービスに巨額の支出をしている。例えば、戦闘機の組み立てに必要なねじや締め具を製造する会社は、政府との取引で利益を得ている。住宅支援を受けている借り主がいる家主、補助金を受け取っている農家、連邦政府の助成金を得ている大学の生化学研究室も同様だ。

 しかし税収だけではこうした支出を全てカバーすることは不可能だ。支出の多くは債務で賄われている。CBOによると、24年度の米政府の歳入、つまり個人所得税、給与税、法人所得税、その他から得た税収は4兆9200億ドルだった。これと6兆7500億ドルの歳出との差額が1兆8300億ドルの財政赤字となり、米国のGDPの6.4%に相当する。

 対GDP比の財政赤字がさらに大きかったことは過去にあるものの、それは第2次世界大戦中や、景気後退を受けて政府が支援に乗り出した危機的状況など、まれな場合に限られる。新型コロナウイルスが流行した2020年には、この数字は15%近くに膨れ上がった。

 CBOは、義務的支出が今後10年間で2兆ドル以上増加し、純利払いは2倍になると予測している。

TOP