資源利用効率が90倍に!
核のゴミも大幅に減らせる

 原子力発電所の核燃料として使われるウランには、大きく分けて、核分裂しやすい(燃えやすい)ウラン235という物質と、核分裂しにくい(燃えにくい)ウラン238という物質がある。原子力発電所で利用する核燃料ペレットには燃えやすいウラン235が3~5%ほど含まれており、ゆっくりと核分裂を起こす仕組みになっている。

 軽水炉では、主に燃えやすいウラン235を使うため、ウランの資源利用効率は1%程度にとどまる。一方、高速炉(FR)は燃えにくいウラン238を燃えやすいプルトニウム239という別の核物質に変えながら稼働できる。そのため、同効率を90%程度に高められるとの期待がある。実現すれば、あと100年ほどで枯渇するとされるウラン資源の有効活用につながる。

 核のごみといわれる高レベル放射性廃棄物を減らせる可能性もある。現在の技術では、使用済み燃料を処理した後、放射能レベルが天然ウラン並みまで低減するのにおよそ8000年かかるとされる。FRの中性子を使って高レベル放射性物質を別の物質に変えることで、低減に必要な時間を300年に短縮し、廃棄物の体積も減らせるとの期待がある。

高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉後
新プロジェクトが進行中

 国内では2024年に高速炉(FR)の実証炉の概念設計が始まり、2040年代の運転開始を目指している。実証炉は、商用炉の前段階に当たる原子炉で、技術検証や経済性の見通しを得るのが目的となる。三菱重工業が開発の中心となる。

 FRの開発にあたり、三菱重工業と日本原子力研究開発機構(JAEA)は、2022年から米テラパワーと協力関係にある。

 日米の協力という点では、JAEAが保有する実験炉「常陽」の知見や同ナトリウム試験施設「アテナ」の活用も検討されている。国内のFR開発が思うように進まない中で米テラパワーの計画に関与しながら、日本の技術力向上につなげる狙いがある。

 政府が新型原子炉の1つとして位置付けるFRだが、実は開発の歴史は長い。

 国内では1977年に前述した実験炉「常陽」が稼働した。1994年には実験炉の次の開発段階に位置付けられる原型炉「もんじゅ」が稼働したが、ナトリウム漏れなどのトラブルが相次いだ。

 もんじゅは燃えにくいウラン238を燃えやすいプルトニウム239燃料に増殖をする機能を伴うFRで、当時は高速増殖炉(FBR)とも呼ばれた。