「核のゴミ」リスクが「たった300年」に超短縮?ビル・ゲイツが惚れ込む「高速炉」とはPhoto:Craig Barritt/gettyimages

2024年6月、ビル・ゲイツ氏が設立したテラパワーが、高速炉「ナトリウム」を実証するプロジェクトの建設を開始した。従来の原子炉と比べて、資源の利用率は90倍、核のゴミも少なくなると期待されている。半世紀前から高速炉の開発に取り組んできた日本も、テラパワーの取り組みに協力している。※本稿は、斉藤壮司・佐藤雅哉『核エネルギー革命2030 核融合と4種の新型原子炉がひらく脱炭素新ビジネス』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。

ビル・ゲイツ氏が手がける
新たな原発「高速炉」とは

 米テラパワーは、ナトリウム冷却方式の高速炉(FR)を開発する原子力スタートアップで、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立した。

 同社と米GE日立ニュークリア・エナジーが共同で開発する高速炉「ナトリウム(Natrium)」と、溶融塩を使ったエネルギー貯蔵施設を組み合わせたプラントを構想する。2024年6月、米テラパワーは米ワイオミング州で高速炉ナトリウムを実証するプロジェクトの建設を開始したと発表。ビル・ゲイツ氏らが起工式に姿を現した。2030年の運転開始を目指している。

「核のゴミ」リスクが「たった300年」に超短縮?ビル・ゲイツが惚れ込む「高速炉」とはビル・ゲイツ氏が設立したテラパワーのナトリウム冷却高速炉「ナトリウム(Natrium)」の想像図(画像;米テラパワー)

 FRでは、動きの速い高速の中性子による核分裂反応で熱を取り出す。原子力発電所で主流の軽水炉と比べて核燃料を有効利用できる他、高レベル放射性廃棄物を減らせるとの期待がある。FRの方式には幾つかあるが、同社は中性子を減速しにいくい物質のナトリウムを、原子炉の冷却材に使う方式を採用する。

 米テラパワーの実験炉ナトリウムの熱出力は840メガワット、電気出力は345メガワット。原子力発電所で一般的な大型軽水炉(電気出力1ギガワット程度)と比べると、3分の1ほどの規模となる。敷地面積も、軽水炉の原子力発電所と比べて3分の1ほど。その一方、原子炉から出力できる温度は500℃以上と、300℃程度の軽水炉よりも高い温度を取り出せる。