ミスを許さないなら、先に伝えるべき

――完璧主義のリーダーだと部下たちはどうなってきますか?

木暮:それはもう明確で、ただ単にその人の下で働くことがものすごく窮屈になって、ここにいたくないと思うでしょうね。あと、リーダーに見られているときは一生懸命やるけど、それ以上のことはしない。

仕事中は雑談を一切してはいけないという会社が実際にあるそうです。でも、それはそれでいいんですよ。リーダーがそういう方針なら、それに賛同できる人がその会社に行けばいいだけであって、そういう方針を打ち出すこと自体は別に悪いことではありません。

悪いのは、自分の方針を明言せずにあとからネチネチ言うことです。

――最初から「私は1つのミスも許さないからね」と明確にしておけばアリ、ということでしょうか?

木暮:本当にそう思っているのだとしたら、「わが社はミスを許しません。それを受け入れてくれるのなら入社してください」と言うのは別にかまわない。ただそうすると多分、誰も入ってこないので変える必要は出てくると思うんですけど。

でもさっきの話したように、それを言わず、「うちは伸び伸びとした社風でみんなに動いてもらっています」などと言っておいて、あとで「細かいミスも許さないから」と腹の中で思って勝手にイライラしているのが困るんです。

リーダーには「言語化」が必要

――言っていることと、実際に思っていることとの間に齟があるから、部下たちは萎縮するわけですね。

木暮:ある会社は、会議の資料に誤字脱字があると会議が止められるそうです。そしてそこに参加している人全員が、他に誤字脱字がないか探し始めるそう。それが起こるとすべてが水の泡になるので念入りにチェックするらしいんですけど、僕はおそらく、どんなに求められても誤字脱字はやってしまうと思います。

――それこそ、以前にお話ししてくれた「ゴールが明確化できていない」という典型的なパターンですね。

木暮:それもありますが、もしそういう会社なら最初に言うべき、という話でもあります。

その価値観を本当に大事にしているのであれば全然かまわないんです。「我が社は、誰に対しても失礼がないよう、すべての書類において誤字脱字は許されない、と思ってやっています。それで良ければうちに来てください」と先に言われていたら、お互いに基準が明確です。社員側も選択肢がありますから「それは無理なので、他を探します」と言えます。でも会社もリーダーも言わないので、ミスマッチが起きてしまうんです。

――リーダーたちも、「誤字脱字を許しません、と事前に伝えなくては」などと考えると、「あれ、それって本当に重要なのかな?」と気付けそうですよね。そういう意味でも言語化って本当に大事だと感じました。