会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。このたび木暮氏に、リーダーが身につけるべき言語化スキルについて、シーン別に対処法や解決策を教えてもらった。(取材・構成/山本奈緒子)
優秀な人の「自分ができるからまわりもできる」思考
――よく聞くのが、指示は明確でよく分かるんだけど言い方がキツくて怖い、というリーダーに対するボヤきです。これってどうしたらいいんでしょう?
木暮太一(以下、木暮):常に言い訳を許さない雰囲気で迫ってくるようなリーダーだと、やっぱり部下はすごいプレッシャーを感じますよね。言っていることは明確だしド正論だとしても、あまり関わりたくないと思ってしまう。
そういうリーダーって多分、失敗したら取り返しがつかないと思っているんだと思います。セカンドチャンスがないと思っている人は、自分に対しても他人に対してもものすごく厳しくなりますから。
――リーダーも好んで怖い存在に決してなりたいわけではないと思うんです。そこはどう気を付けていけばいいんでしょうか?
木暮:僕が以前に働いていた会社にもいたんですよ、全身エクセルでできてるみたいな方が(笑)。僕がエクセルで作った数字ギッシリの資料を出すと、5秒で「ここ数字おかしくない?」と言うんです。僕より先に間違いを見つけるんです。
そんなふうにものすごくシビアな人で。とにかく圧がすごい。たぶん、他の人も自分と同じようにできると思っているんでしょうね。できないのはやっていないからだ、という発想が根本にあるんだと思います。
――リーダーになる人は優秀ではあるので、そういうふうに思ってしまう人は多そうですよね。
木暮:実際、僕も昔そういう発想を持っていました。自分ができるからまわりの人もできる、と。
「普通にやればいいだけなのに、何でやらないの?」という発想なので、「やらないのは怠けているんだ」と思ってしまう。なかなか自分でそこに気づくのは難しいですよね。
「すべてが完璧」でなくてもいい
――少なくとも、こういう言い方をやめれば圧を減らせる、というものはありますか? たとえば先ほどおっしゃっていた数字のミスを見つけたとき、リーダーはどう指摘すれば良かったんでしょう?
木暮:そういうリーダーってけっこう完璧主義者の人が多くて。冷静に考えると、資料で数字が1つ間違っているのとか、本当は大したことない話です。でも許せない。もちろんその数字が決定的に大事なものだったら別なんですけど、間違いを指摘したところで大した影響はありません。
だから「すべてが完璧じゃないといけない」と思うのではなくて、結果に影響を与える要素と与えない要素を自分の中で整理する。それが大事なんじゃないかなと思いますね。
このタイプのリーダーは頭がいいので、そのくらいのことは分かると思うんです。この数字が間違っているとどれだけの影響が出てきそうかとか、このまま進めるとどうなってしまうかとか。本当は分かっているはずなんですけど、すべて同列に「間違っているからダメ」となってしまっているんだと思います。
――そこはリーダーとして、常に意識することが大事ですね。
木暮:でも本人の中でこれが当たり前になってしまっていると、なかなか気づけないんですよね。僕がもしそういう人に会ったら、「なんくるないさ~」と言うしかないと思っていますけど(笑)。今回できなくても次やれば良くない? と。
セカンドチャンスがあるということを意識してもらうことが、僕は一番かなと思っています。
というのも、そういうタイプの人ってけっこう脆いです。脆いから失敗できないと感じて、厳しくなってしまう。本当は本人も苦しんでいるんじゃなかと思いますね。
たとえば、部下が仕事中に雑談をしていたら、「遊んでんじゃねーよ」みたいな感じで注意するリーダーがいますよね。それはたしかに正論なんですけど、「仕事中に遊んでいる」ということよりも本当は部下たちが雑談しているという状況に落ち着かない、というのが大きいんですよね。
雑談によって損失した時間によって、本当はできるはずのことができなくなって取り返しがつかなくなる、みたいなことを思っているからそういうリアクションになってしまうんだと思います。