Fとは、フレンドのことで、F取りとは、学会員が知り合いに公明党議員への投票を依頼し、実際に投票してもらうことを言う。

 F取りのためには、知り合いに電話を掛けたりすることになるが、その際には、学会員であるということを明かさなければならず、勇気を必要とする。実際、正体を明かしたために、友人と絶縁状態になってしまうこともあるという。

 F取りが外部に対する働きかけであるとすれば、Kづくりは、組織の内部に対する働きかけを意味している。

 Kとは活動家の略で、学会活動に熱心ではなく、ほとんど休眠状態にある会員を掘り起こし、彼らに公明党議員に投票させることが、Kづくりである。これには、組織を再活性化させるというもう一つの機能がある。

選挙は「血の小便を流す」
協定で票の奪い合いを回避

 また、地方議会などでは特にそうだが、一つの選挙区に、公明党の議員が複数立候補している場合がある。その際には、学会は独自に「管区」を決めて得票の均衡化をはかり、学会員同士で票の奪い合いをしないよう、「管区協定」を結ぶことになる。

書影『創価学会』(新潮社)『完全版 創価学会』(新潮社)
島田裕巳 著

 創価学会の選挙にかんしては、「血の小便を流す」という言い方がある。

 これは、投票日前の一週間、特に選挙活動に熱を入れることをさしている。血の小便を流すか流さないかで、票はかなり変わってくるという。おもしろいのは、選挙活動が一種のイベントとしての性格をもっている点である。選挙活動をともにしたことで、親密になり、結婚にいたる学会員のカップルも少なくないという。

 このようなきめ細かな選挙活動ができる組織はほかに存在しない。公明党は、日本共産党と鍔迫り合いを演じ、票の獲得合戦をくり広げてきたが、けっきょく、日本共産党は公明党には勝てなかった。

 共産主義のイデオロギーによる人間の結びつきは、信仰による人間の結びつきに、強さの点でおよばなかったのである(米本和弘「荒川区町屋三丁目 下町の学会員さん物語」、村山和雄・原田信一「これが学会選挙の舞台裏だ!」『となりの創価学会』)。