あなたは知人から公明党候補者への投票を呼び掛けられたことはないだろうか?もしも、その経験があるならば、公明党の相互扶助組織である創価学会員が行う“F取り”と呼ばれる選挙運動を受けた可能性が高い。彼らは友人を失うリスクを負ってまで選挙運動を行っており、その理由は信仰心からだけでなく、実利があるからだという。創価学会の選挙運動がどのように行われているのか、その実情と背景について宗教学者の島田裕巳氏が解説する。※本稿は島田裕巳氏『完全版 創価学会』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。
他宗教の信者より活動熱心
一体感がある創価学会員
創価学会は、たんに巨大宗教組織であるというだけではなく、熱心な会員を数多く抱えている点で、他の宗教団体とは一線を画している。
立正佼成会の場合には創価学会に近い部分があるが、既成神道や既成仏教の信者はそれぞれが属している教団に必ずしも強い一体感をもってはいない。しょせん神社の氏子や寺の檀家に過ぎないわけで、普段の生活のなかで、自分たちが巨大宗教組織に属していると意識することさえないだろう。
それに比べて、創価学会員は、自分たちの組織に強い一体感をもち、組織を自らのアイデンティティーの基盤とさえ考えている。だからこそ、「折伏」と呼ばれる布教活動や選挙運動に熱心なのである。
これまで、折伏の対象となったことがあるという人も少なくないはずだ。
友人や知人、地域の知り合いなどから、近くにある創価学会の会館で開かれる「座談会」に出席するよう誘われたり、映画会やビデオの上映会を見に来ないかと誘われて行ってみると、池田大作名誉会長の活動を紹介する映画やビデオを見せられたりしたことがあるだろう。
あるいは、選挙が近づいた頃、それほど親しくしているわけではない学校の同窓生や仕事上の付き合いのある人間から電話がかかってくることがある。
なぜ電話がかかってきたのだろうかといぶかしく思っていると、それが公明党の候補者への投票の依頼だったりするのである。
カリスマ「池田大作」に熱狂
数が多いだけの巨大組織ではない
創価学会にかんしては、池田大作というカリスマ的な独裁者、権力者によって支配されているというイメージがある。果たして、そのイメージが事実を正確にとらえたものかどうかについては検討を加える必要があるが、マスメディアが伝える池田大作像は、必ずしも芳しいものではない。
実際、学会員たちは、池田を熱心に信奉し、崇拝している。各地に建てられた創価学会の会館には、池田の名前を冠したものが少なくない。そうした会館に池田がやってくれば、学会員たちは、何を措いても会館に駆けつけ、熱狂して池田を迎えるのである。