「念のため残しておこう」への対処法
木暮:ただしここでよく起こる問題があります。たとえば「業務時間を短くしなければならない」となり、「ではこれをやめましょう」と言ったとします。するとほとんどのケースは「念のため残しておかなければならない」となるんですよ。
そうなったときは、「やめたら誰にどういう変化が起こるか」を考えるんです。
スティーブ・ジョブズはアップルから追い出されて、いくつか他の事業を立ち上げた後に、再び乞われてアップルに戻りました。そのとき彼が最初にやったのが、商品の整理なんです。顧客のニーズに応えて増えすぎた商品を4つに絞ったんです。当然、社内から猛反発を受けたんですけど、たぶんジョブズの頭の中では「これはやめても誰にも致命的な変化が起こらない、だからやめる」と見えていたはずです。
あったほうがいいのか、ないほうがいいのかとなると、みんな「あったほうがいい」と言うものです。何か使うかもしれない、いつかチャンスがあるかもしれない、と。だけどやめたときに誰にどういう変化が起こるのか考えて、「明確にこの人がこういう変化を被ってしまう」と言えないのだったら、それはただ単にあなたが心配しているだけだよね、という話なんです。
――その英断を下すのもリーダーの役割ということですね。とくに日本社会は何かを変えたくないという思考が強いので、とりあえず残しておこうとなりがちですけど、そこは明確に考えてやめていかないといけませんね。
木暮:“ないもの”は指摘されますからね。“あるもの”へのプラスの評価よりも、「どうしてこれがないんだ」と言われることのほうが多い。でも、“ないことで起こる変化”をちゃんと考えていれば、指摘されても「なかったとしても影響ないですよね」と言えるんですよ。
――やめられない文化。これも言語化によってきちんと整理できるということですね。