会社やチームのリーダーとして、いま、求められているリーダーとはなんだろうか? 責任をとること? 部下やメンバーの話をよく聞いて、仲を深めること?
『リーダーの言語化 「あいまいな思考」を「伝わる言葉」にする方法』の著者である木暮太一氏は、リーダーの本来の役割は、どこに向かって進むべきかを「言葉で明確に伝えること」だと話す。このたび木暮氏に、リーダーが身につけるべき言語化スキルについて、シーン別に対処法や解決策を教えてもらった。(取材・構成/山本奈緒子)
「やめる理由」があるならやめればいい
――これまでやるべきことを明確伝えるのがリーダーの役割、と教わってきましたが、やらなくていいと伝えることや間違ってやっていることへの修正、といった言語化も必要かなと思ったのですが……。
木暮太一(以下、木暮):やめなければいけな理由がある場合は、リーダーが指摘してやめさせる、もしくは修正を促すことが必要ですね。一方で、そうではないのなら別に放っておけばいいんじゃないかなと思うんです。
――そもそもそこは言語化しなくてもいいケースもある、ということですね。でも日本の場合、やめるべき理由があるケースのほうが多そうです。
木暮:一番分かりやすい理由には「長時間労働」とか「無駄な経費を使っている」といったものがありますよね。たとえば、本当にその仕事や雑談などが原因で長時間労働になっていて是正しなくてはいけない、という目的があるのだったら、それはたしかに“やめるべき理由”だと思います。
一方でGoogleが採用しているみたいに、「業務時間の20%は会社からの業務ではなくあなたが好きなことに当てていいです」という方針を取り入れて上手くいっている場合もあるんです。
その20%の時間は、会社からすると無駄なことになるはずです。業務時間中に業務指示ではないことをやっていい、と言っているわけですから。
では何のためにそんな方針を設けているかというと、みんなの発想とかクリエイティビティを生かしたいから。「これをやれ」という仕事だけしていると、その範囲を超えないじゃないですか。だから、そうではなくて違うことをやってみたらいいんじゃないか、と考えたわけです。みなさんが日々思っていることを実現させるための時間を取っていいよ、と。
要は、無駄なことの中に何か将来の芽が潜んでいることもあると考えたわけで、そういう発想であればとくにやめる必要はないんです。
やめるべきことにも目的があるはず
――雑談だから無駄、長時間労働だからやめるべき、と一刀両断に決めつける前に、本当にやめなければならないことか? を明確にする必要があるということですね。
木暮:やるべきことと同様、やめるべきことにも目的があるはずなんです。だから目的があるのならば修正する。ないのならば、そもそもやめるべきかどうかも本来は分からないはずなんですよね。ただ単に無駄っぽいからやめよう、みたいな話だと、発想としてちょっと変わってきてしまうかなと思います。
――以前おっしゃっていた、とにかく残業を減らそうとする企業が増えている、という話に通じますね。でも本当は、「何となくやめたほうがいいのかな」と思ったことに対しては、理由をちゃんと考えてみなければならない。
木暮:そうです。理由をちゃんと考えてみたうえで、最終的には自分の目的に沿っているかどうかで検証したほうがいいと思います。なぜやめたほうがいいと思っているのか、それをやることで目的にどう弊害になっているのか、など。
――そうではなく「残業を減らすべき」が先に来てしまうとおかしくなるということですね。まずはゴールをハッキリさせ、そこから逆算でやめていくべきなのに。
木暮:たとえば「業務時間を短くしたい」というゴールがあって、そのために何かを削らなきゃいけないと考えているのならばいい。ゴールがハッキリしているので「何を削ろうか」、「これはやめても問題ないから削ろう」などと検証できるはずです。