地下鉄・九段下駅の通称“バカの壁”が取り払われたことで、メトロと都営の乗り換えがスムーズになった
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 産業競争力会議で、竹中平蔵・慶應義塾大学教授ら民間議員が進める「アベノミクス戦略特区」の中身を4月16日付で、一部新聞が報じたことが、波紋を広げている。

 中でも苦虫をかみ潰すのは、「都営地下鉄が24時間運行」と見出しにされた東京都だ。

 実は、都営交通の運行24時間化は、猪瀬直樹・東京都知事が日本時間の同日朝に訪問中の米ニューヨークで、都のサプライズ施策として、競争力会議に先駆けて大々的に打ち出す腹積もりだった。この方針は、当然、猪瀬氏と直接調整してきた竹中氏も知るところ。しかも、24時間化は地下鉄ではなく都営バス。トンビに油揚げをさらわれた上に、誤報も加わっては面目丸潰れというわけだ。

「戦略特区の都のメニューは、都がかねて進めている施策。競争力会議のお墨付きは追い風だが、このような情報漏洩は信頼関係を損ないかねない」と都幹部は憤る。

 片や、心中穏やかでないのが、国土交通省と東京メトロだ。特区案に、メトロと都営地下鉄の一元化も盛り込まれたからだ。

 猪瀬氏にとって、地下鉄一元化は五輪招致と並ぶ「1丁目1番地」。だが、都営の多額の累積損失から国交省側には反発が強い。

「初乗り運賃を都営がメトロと同額に下げたら都営は赤字に転落する。都はメトロのカネを当てにしているだけだ」と国交省幹部。

 だが、3月に行われたメトロと都営の初の合同訓練も、一元化をにらんだ都の布石とされ、「外堀を埋められている」(別の都幹部)。別の国交省幹部は「猪瀬氏が竹中氏をどうたき付けたかは知らないが、竹中氏が猪瀬氏の言う一元化を理解しているとは思えない」と早くも“敗戦ムード”すら漂っている。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

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