今、世界中で「ストイシズム」の教えが一気に広がっている。日本でも、幸せな金持ちとストイシズムの興味深い関係を描いた『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』が話題だ。著者は『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』がベストセラーとなり、「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出されたスコット・ギャロウェイ。日本で「GAFA」という言葉を定着させた全米屈指の人気教授が明かす「世界最先端の“お金と人生”の戦略」とは? 世界600万部突破『サイコロジー・オブ・マネー』著者モーガン・ハウセルとゴールドマン・サックスCEOがダブル推薦する全米ベストセラーより内容の一部を特別公開する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)。

【悲報】「投資の流れ弾で死にかけた人気教授」がこっそり教える深すぎる投資の教訓とは?Photo: Adobe Stock

会社の倒産で純資産の7割を喪失

本書では「分散投資」の重要性に触れている。
ご多分に漏れず、私も分散投資の価値を痛い目に遭うことで学んだ
1990年代後半、私が設立したeコマース会社のレッドエンベロープは、ドットコムブームに乗り、IPO(新規株式公開)に向けて突き進んでいた。

私は34歳にしてプライベートジェット機を買おうとしていた。
無敵になったような気分だった。

だがその後市場が急転し、IPOも撤回された。
その余波で会社は苦境に陥った。

私たちは経営陣を入れ替えた。
私はベンチャー投資家たちと(社交辞令的な表現をすれば)意見が合わなかったが、それでも会社に残った。

同社は2003年に上場したが、私は保有していた株式を現金化せず、このブランドに入れ込んでいたこともあって、さらに株を買い増した。
そしてそのまま5年間、点滅する危険信号を無視し続けた。

2008年に会社が倒産したとき、私は純資産の7割を失った

そんなことになるとは思ってもみなかった。
港湾労働者のストライキや、会社の物流施設でのトラブル、ウェルズ・ファーゴ証券のクレジットアナリストに低評価をつけられたことなど最悪の事態が重なり、わずか10週間で会社は倒産した

最悪の事態は稀にしか起こらないが、いつか必ず起こる。

過去最悪の投資判断と「防弾チョッキ」とは?

私は分散投資についての2つ目の教訓を、2011年に過去最悪の投資判断をしたことで学んだ。

私はネットフリックス株を、1株12ドルで(大学院教授の報酬を基準にすれば)大量に買った。
それは悪い決断ではなかった。

私は同社のビジョンと経営者の能力を評価していたし、メディア業界の展望や、ストリーミング技術が市場に変革をもたらすことについてそれなりの自信があった。

しかし、市場は同社に疑問を持っており、株価は上がらなかった。

結局、その半年後、私は年末の節税目的もあり、同社の株を1株10ドルで売却した。

その後の10年間、スマートフォンの画面に同社のティッカーである「NFLX」の緑色のテロップが表示されるたびに、身体の具合が悪くなった。

その痛みがピークに達したのは、同社株が、私が買った値段の50倍をつけたときだ。

しかし、胸に弾丸を受けたような痛みはあったものの、ケブラー素材の防弾チョッキを着ていたので大丈夫だった。

投資では「流れ弾」に気をつけろ

つまり私のポートフォリオは、ネットフリックスだけではなかった。
私が保有していたアップル、アマゾン、ナイキなどの株も、同期間に株価を上げていた(ネットフリックスほどではないが)。

節税目的でネットフリックス株を売ってしまったのはボディブローのように効いたが、分散投資によって致命傷には至らなかった

投資の世界では、必ず流れ弾が飛んでくる。
だから、それを防ぐ備えが必要だ。
この流れ弾を免れる人はいない。

株価が暴落したときの画面をスクリーンショットに撮ってまわりに見せびらかす人はめったにいないので、普段誰かが大損をした情報をあまり目にしない。

だが、そんなケースは至るところにあり、誰もその可能性からは逃れられないのだ。

(本稿は『THE ALGEBRA OF WEALTH 一生「お金」を吸い寄せる 富の方程式』の一部を抜粋・編集したものです)