BtoCにおけるPMF（Product Market Fit）達成の条件とは？

2022年11月、内閣主導で「スタートアップ育成5か年計画」が発表された。2027年をめどにスタートアップに対する投資額を10兆円に増やし、将来的にはスタートアップの数を現在の10倍にしようという野心的な計画だ。新たな産業をスタートアップが作っていくことへの期待が感じられる。このようにスタートアップへの注目が高まる中、『起業の科学』『起業大全』の著者・田所雅之氏の最新刊『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』が発売に。優れたスタートアップには、優れた起業家に加えて、それを脇で支える参謀人材（起業参謀）の存在が光っている。本連載では、スタートアップ成長のキーマンと言える起業参謀に必要な「マインド・思考・スキル・フレームワーク」について解説していく。

「マジックモーメント」を
できるだけ早いタイミングで達成できるか?

   BtoCの場合のPMF（Product Market Fit）は、ユーザーの活性化ができているかどうかが重要である。以前に以下のUXエンゲージメントマップのところでも紹介したが、活性化の視点として、そのプロダクトに出会って、一番最初の印象や「最初に受ける体験の良さ」に注力することが重要だ。

　ユーザーを活性化させ、「あ！ なるほど！」という感動、アハ体験（マジックモーメント）としていく施策が欠かせない。

　アクティベーション（ユーザーに価値を実感させるマーケティング）がなければ、顧客は定着せず、結果として、PMFには至らない。

　これもTTFV（Time to First Value）の項でも説明したが、「マジックモーメント」をできるだけ早いタイミングで達成できるかが、その後のプロダクトのパフォーマンスを握っている。

ベースフードは、いかに成功したのか？

　たとえば、2022年に上場した約30種類の栄養素が入った完全栄養食を販売するベースフードは、初期の頃は、アクティベーション（ユーザーの活性化）ができていなかった。

　最初に「BASE PASTA」というプロダクトを打ち出したのだが、ネガティブなレビューが散見され、盛り上がることはなかった。

　しかし、2019年に「BASE BREAD」を発売し、ポジティブなレビューが書かれるようになり一気に認知が広がった。これらを食べた方々が、商品やブランドに価値を感じて、行動変容していったのである。

　さらに、コンビニで商品展開を開始すると売上を一気に伸ばした（下図）。簡単に購入できることから、自分の生活の中に「BASE FOOD」や「BASE BREAD」が入り込み、定期的に購入するという行動変容にもつながった。

　さらに、サブスクで買ったほうが安いため、多くの顧客がサブスクに登録した。そして、10万人を超えたタイミングで上場したのだが、結果として、BASE FOODを食べることが習慣化し、生活の中でなくてはならないものと価値変容していった。この状態は、ライフタイムバリューが非常に高いといえる。

BtoCにおけるPMFのチェックリスト

　ここまでベースフードの好例を紹介したが、いかにして、様々なプロダクトでこの状態を達成するかという視点が重要である。下図は、BtoCにおけるPMFのチェックリストだ。

　起業参謀は、こうしたチェックリストを活用して起業家のPMF度合いをチェックする必要がある。

（※本稿は『「起業参謀」の戦略書ーースタートアップを成功に導く「5つの眼」と23のフレームワーク』の一部を抜粋・編集したものです）