児童虐待や暴行、性加害…子どもを狙った卑劣な犯罪のニュースに心を痛める人は多い。
令和5年における18歳未満の子どもに対する不同意わいせつの検挙件数は1694件、不同意性交等の検挙件数は709件*に上る。
子どもの身を守るために、親として何ができるのだろうか。
本記事では、池上彰総監修の『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第4章「犯罪からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に話を聞いた。
(取材・構成/杉本透子)
*出典:警察庁「令和5年における少年非行及び子供の性被害の状況」

子どもにとって危険な場所は「日常」のなかにある
――街や公共の場で子どもを犯罪から守る方法を伺いたいと思います。以前インタビューさせていただいた際に、「公共のトイレは危険」とおっしゃっていましたが、トイレ以外にも気をつけたほうがいい場所はあるでしょうか。
国崎信江氏(以下、国崎):『いのちをまもる図鑑』にも書きましたが、連れ去られやすい場所は危険です。人通りのない道を歩いていて、ワンボックスカーのスライドドアが開いて引き込まれるというケースがあります。ガードレールのない道はなおのこと引き込まれやすくなるので、ひとりで歩いているときは要注意です。
――時々うしろを振り返って車が来ていないかどうか確認しないといけないですね。
国崎:ひとけのない道は本当に注意するべきだと思います。トンネルの中や、薄暗い時間帯などもそうですね。
「花火大会」など人混みでの犯罪は気づかれにくい
――逆に人混みはいかがでしょうか?
国崎:じつは、人混みにも注意が必要です。人が多いごちゃごちゃした場所では紛れやすくて、一瞬で子どもを見失うことがあります。特に花火大会はどれだけ注意しても足りないことはありません。花火大会が開催される時間帯は外が暗くて、誰もが空を見上げていますよね。大きな歓声や拍手も起こります。こうした中で、子どもが連れ去られてしまった事件があるのです。
お子さんは両親の間にいたのですが、後ろから口を塞がれ、抱き上げられて連れ去られてしまった。花火大会のような人混みでは、子どもが叫び声を上げても周囲の人には「子どもがぐずっている」と勘違いされて犯罪に気づかれにくいのです。
――そんなニュースがあったんですね…。
国崎:ニュースにはなっていないんです。日本で行方不明になる子どもは多く、令和5年度に行方不明になった9歳以下の子どもは1115人もいます(警察庁「令和5年における行方不明者の状況」より)。自ら家出する子どものほうが数としては多いですが、そうではなく忽然と行方不明になってしまったお子さんも多くいます。
花火大会のように、人が大勢いてもみんなが何かに集中していると犯罪に気づかれにくい。なので、子どもと人混みに行くときは絶対に「子どもを自分の【体の前】に立たせる」「その上で、必ず【肩や手を握って離さない】」ことが大前提です。これはどのご家庭でも徹底していただきたいです。
「初詣」も油断しないで!
――これからの時期は初詣なども気をつけないといけないですね。
国崎:そうですね。初詣は大人がお賽銭を入れることに集中して子どもから注意がそれがちです。どんな場面でも子どもは保護者の前に立たせ、視界から外さないようにしましょう。
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』に関連した書き下ろしインタビュー記事です。
国崎信江(くにざき・のぶえ)
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。