9月27日、SBIホールディングスは台湾・力晶積成電子製造(PSMC)との提携解消を発表した。総投資額約9000億円が白紙に戻り、色めき立っていた東北の地銀には悲哀が漂う。特集『新・銀行サバイバル メガバンク 地銀 信金・信組』の#8では、突然の資金需要消滅によって地銀に生じた変化を分析。窮地に立たされている“限界地銀”の存在も浮き彫りになった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
半導体チーム創設に特別セミナー開催
総投資額9000億円に地銀熱狂
「経済産業省への補助金申請が遅れ続けていたことなど、少し気掛かりな点はあった。それでも、9月27日は青天のへきれきだった」
宮城県のある地方銀行関係者は、SBIホールディングス(HD)が台湾・力晶積成電子製造(PSMC)との提携を解消した日のことについて、そう振り返る。
2023年8月、PSMCとSBIHDが宮城県大衡村に半導体工場を建設することを決めた。総投資額は約9000億円。東北に訪れた絶好のチャンスを逃すまいと、周辺の地銀は色めき立った。
宮城県で圧倒的なシェアを誇る七十七銀行はその筆頭だ。同行では23年12月に半導体プロジェクトチームが発足。同チームの山口光太郎プロジェクトマネジャーは「工場建設に備え、JSMC(現JSMCホールディングス。SBIHDが設立した半導体工場の設立準備会社)に対して関連企業を紹介するビジネスマッチングに取り組んでいた。半導体工場周辺のサプライヤーの調査も進め、街づくりを含めて自治体とも連携を深めていた」と話す。
七十七銀行は、トップの小林英文頭取も半導体プロジェクトに率先して取り組んでいた。その象徴は、同行が極秘裏に全国の金融機関に呼び掛けて開催した大規模セミナーだ。
次ページでは、小林頭取の肝いりで7月19日に開催された特別セミナーの詳細と、PSMC撤退後の地銀の変化を分析。窮地に立たされる地銀の実名を明かす。