台湾積体電路製造(TSMC)の熊本進出により、九州の地銀間で資金需要の争奪戦が激化することは必至だ。熊本県で盤石の地位を築いてきた肥後銀行は、この僥倖(ぎょうこう)でも他行を圧倒できるのか。連載『メガバンク・地銀・ネット銀を大解剖[最新]銀行ランキング』の本稿では、肥後銀行頭取のインタビュー・後編として、半導体サプライチェーンでの成約件数や、熊本に続々と進出する台湾企業との取引状況について聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
ティア2、ティア3に商機
不動産需要よりも優先
――24年4月から開始した九州フィナンシャルグループの新中期経営計画では、台湾積体電路製造(TSMC)進出に伴う電子デバイス関連産業向けのKPIとして、サプライチェーン参入支援企業数50社の目標を掲げています。どのような資金需要を取り込んで、この目標を達成しますか。
TSMCの進出によりさまざまな面で資金需要が高まっていますが、先行しているのはホテルや社員寮、マンションを建てたいという不動産関連のニーズです。
銀行というのは、得てして不動産関連の資金需要に群がるものです。しかし、そこに資金を投下し続けて不動産バブルになることは望ましくありません。TSMCの進出による効果が一過性のものになってはいけないのです。
われわれとしては不動産関連よりも、地元企業がTSMCの二次サプライヤー(ティア2)、三次サプライヤー(ティア3)にしっかりと食い込めるように努めます。また、経済効果はサービス業などあらゆる分野に波及するので、周辺分野にも投資資金をしっかりと出していきたいと考えています。
中期経営計画を策定する際の議論では、自分たちの数字をどう決めるかということに目が行きがちです。しかし、サプライチェーンへの参入企業をできるだけ多く支援しなければ、そもそも九州全体の経済が良くなりません。
この問題意識を念頭に、サプライチェーン参入支援数を3年累計で50社という非常に高い目標を掲げました。その結果として、われわれの融資が伸びるという順番で新中計を策定しています。
――笠原社長は今年1月、肥後銀行や鹿児島銀行を含む九州の地銀11行が半導体関連で連携協定を結んだ際に「競争と協調の時代に入った」と述べました。どこで競争し、どこで協調していく考えでしょうか。
熊本に進出した台湾企業における肥後銀行のシェアは圧倒的だと話す笠原社長。次ページでは、サプライチェーン支援で肥後銀行が今年度成約した件数に加え、同行が熊本経済同友会や玉山銀行などを通じて構築している台湾のネットワークについて聞いた。