本連載『[最新]銀行ランキング』では、2024年の株主総会における地方銀行全頭取の株主賛成率ランキングを作成した。株主賛成率がワースト1位だったのは、大分銀行の高橋靖英頭取だ。高橋頭取は今年の株主総会後に正式就任したばかりだが、のっけから厳しい船出となっている。そこで、株主から不評な理由や挽回策について、高橋頭取本人に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)
銀行目線の数値目標に弊害
“姫野ターン”が転機に
――新中期経営計画の策定年度と同じタイミングで頭取に就任されました。県内回帰・地域密着化に転換した2010年の姫野昌治頭取以降の路線を継承するのでしょうか。
私は“ド地銀”経営を極めます。地域経済が衰退しているので、しっかりとお客さまに寄り添わなければなりません。
このような考えに至った背景には、ご指摘の通り、14年前の姫野頭取から続く地域密着化があります。
2010年の姫野頭取就任と同時に、私も博多の支店長から本部の企画部門に異動となりました。姫野頭取、次の後藤富一郎頭取の下で約14年、経営戦略の策定に携わりました。
2代の頭取と共に仕事をする中で気付いたことは、銀行目線ではなくお客さま目線でなければ、大分銀行は長続きしないということです。
姫野さんの方針転換は“姫野ターン”と呼ばれます。銀行の規模を拡大することよりも地域密着化を優先し、お客さま本位の業務運営をすることです。
昔の大分銀行は、銀行目線の目標項目を達成して得点を積み上げた行員が評価される仕組みでした。しかし、この仕組みには弊害がありました。
例えばお客さまが信用保証協会を使わなくてもよい場面で、行員はお客さまに信用保証協会を使ってもらおうと提案してしまいます。信用保証協会をどれだけ使ってもらうかが行員の数値目標になっていて、達成すれば評価に加点されるからです。
そのような個人評価を変えようと言ったのが姫野さんです。そこで姫野頭取は、営業店ごとのビジョンを作りました。
支店長の場合、自分が支店長の期間だけ結果を出せばよいわけではありません。長い目線でお客さまとの関係を築くことも重要です。このことを意識して次の支店長につないでいけるようなビジョンを作ったのです。
姫野頭取以降の14年で、大分銀行はかなり良い方向に変わりました。
――姫野ターンから14年にわたり地域密着化を進めてきましたが、高橋頭取は今年の株主総会において、地銀全頭取の中で株主賛成率がワースト1位でした。株主からの評価が低い要因はどこにありますか。
2代の頭取で地域密着化を進めてきた大分銀行。しかし、バトンを引き継いだ高橋頭取は、地銀全頭取の中で株主賛成率ワースト1位という厳しい結果を突き付けられた。この結果について高橋頭取は「株主に対する意識が低かった」ことを認め、さまざまな挽回策を語る一方、地域金融機関の経営について機関投資家は理解していないことも指摘した。さらに「(当期純利益やROEなどの)計画目標が低いのが大分銀行の特徴であり、高い目標を掲げればいいというものではない」と断言。次ページで、その真意に迫った。