半導体の覇者#5写真提供:KIOXIA

半導体メモリー大手のキオクシアホールディングスが年内に株式上場する見通しになった。国内で初めて、上場承認前に有価証券届出書を提出する手続きを採用したことで、ベールに包まれていたキオクシアの財務実態が明らかになった。特集『半導体の覇者』の#5では、そこで判明した巨額借金の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

メモリー市況回復で「三度目の正直」
新ルールで明らかになった財務の詳細

 キオクシアホールディングスは11月8日、IPO(新規株式公開)の新たな制度「承認前提出方式(S-1方式)」を採用して上場を目指すと発表した。新方式を採用したのは、株式公開までの時間を短縮するためだ。

 2018年6月に東芝から独立したキオクシアにとって、株式上場は3度目の挑戦となる。

 1度目は20年8月。独立からわずか2年のスピード上場を目指したが、米中対立の余波から想定していた時価総額2兆円の達成は難しくなり、上場中止を決議した。

 2度目は今年8月。フラッシュメモリー市況の回復で10月末までの上場を目指していたが、目標とする時価総額1.5兆円に対して投資家の需要は1兆円に満たず、上場を再び見送った。

 そして今回、改めて上場を目指すことにしたのは、足元で追い風が吹いているからだ。市況回復とともに業績は改善傾向にあり、24年4~9月期の当期純利益は過去最高の1760億円となり黒字転換を果たした。

 半導体メモリーの市況は変動が激しいため、市況が好調なうちにいち早く上場にこぎ着ける必要がある。当初は「24年12月から25年6月まで」としていたが、新ルールで投資家の需要を探った結果、年内上場が可能と判断した。それでも時価総額は当初見通しの半額である1兆円すら割り込む見通しで、ジレンマを抱えながらの「三度目の正直」となりそうだ。

 すでにキオクシアは、S-1方式に基づいて金融庁に有価証券届出書を提出している。次ページでは、そこで明らかになった財務の詳細を基に、巨額の有利子負債の実態に迫る。キオクシアが1.2兆円もの借金を抱えており、今もその負担にあえぐ「根本的な理由」を解き明かす。