学力が高い子どもがたくさん住んでいる地域では、自ずと地域全体の学力水準も高くなる。そこから「○○市は教育水準が高い」といったうわさが生まれ、そのうわさが教育熱心な人々を引き寄せ、その積み重ねでうわさは事実になっていく。この悪循環に歯止めをかけるためには教育的に不利な立場にある子どもの多い地域に対する手厚い支援が必要である。
高校の不登校者の比率で
大阪は全国第1位に
次に生徒指導上の課題をみよう。ここでは、文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(旧「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」)から数字を拾ってみたい。不登校や中退そのものは「問題行動」とはいえない。だが、不登校や中退によって教育を受ける機会が閉ざされたり進路選択が難しくなったりする可能性は高い。教育からの排除は労働市場からの排除へとつながる。現在の学習権と将来の生存権の保障に関わるという意味で、不登校や中退は放置できない教育課題である。
表6-1に示すのは一連の教育改革が始まった頃(2007年度)と直近(2022年度)の不登校と高校中退の状況である。
2007年度の大阪府の不登校者数は、小学校1596人、中学校7547人、高校5881人だった。その数は、2022年度までにそれぞれ7153人、1万3651人、6452人に増加した。小学校と中学校を合わせた1000人あたりの不登校者数は、12.3人から32.4人に増加した。全国では12.0人から31.7人への増加である。高校では1000人あたりの不登校者数は26.8人から31.8人へと増え、全国第1位になった。全国では15.6人から20.4人への増加である。このように、結局のところ、かねての課題は積み残されたままである。
不登校者向けの「特別」な学校が
増えることで失われるもの
高校中退はどうか。2007年度から2022年度にかけて、大阪の高校中退率は3.4パーセントから1.6パーセントへと減少した。全国では2.1パーセントから1.4パーセントへの減少である。一頃よりは落ちついたものの、高校中退率は依然として高い水準である。人数は東京都の5047人に次ぐ3425人で全国2位、中退率では全国6位である。こちらもまた、課題は積み残されたままである。