大阪市では、不登校の生徒向けのカリキュラムをもつ不登校特例校の中学が2024年4月に開校した。特例校は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」の制定(2016年)を機に、全国で設置が進みつつある。また、先にも述べたように大阪府は、定員割れが続いていた府立高校2校を2024年度に「多様な教育実践校(ステップスクール)」に指定した。これは義務教育段階までに「学校生活での困りやつまずきを経験した」生徒を対象とする高校である。
これらの学校で学び直す機会を得る子どももいることだろう。だが、私は「特別」な学校を増やすことに諸手を挙げて賛成できない。「特別」な学校が増えることによって、「普通」の学校が不登校者や中退者を生み出す原因や背景が問われなくなり、「普通」の学校が変わる契機が失われてしまうからである。
不登校に対応する学校が増えることは、一見すると望ましいことのようにみえる。だが、「普通」の学校に馴染めない子どもを「特別」の学校に振り分けていけば、「普通」の学校の中の多様性は失われる。許容される「普通」の幅は狭くなり、子どもたちの学校生活は窮屈になっていく。学校に馴染める「普通」の子と馴染めない「特別」な子の振り分けを進めるのではなく、「普通」の学校のあり方を根本から問い直す必要がある。
依然として増えている
学校での暴力といじめ
不登校や中退とならぶ生徒指導上の課題に暴力行為やいじめがある。大阪では今般の教育改革が始まる前から、これらの課題の解消に取り組んできた。
文科省の調査では、「自校の児童生徒が、故意に有形力(目に見える物理的な力)を加える行為」を暴力行為と呼び、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人間関係のある他の児童生徒が行う心理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」をいじめと呼んでいる。前者(暴力行為)は人や物に対する物理的な攻撃を指し、後者(いじめ)は人に対する攻撃で、その手段には言葉や態度によるものも含まれる。