表6-2に示すのは2007年度と2022年度の暴力行為といじめの状況である。

 2007年度の大阪府の暴力行為件数は、小・中・高等学校を合わせて6975件だった。その数は2022年度には9764件に増えた。児童生徒1000人あたりでみると7.2から11.3への増加である。この間、全国の1000人あたり件数は3.1から7.5に増加した。大阪と全国との差は小さくなったが、それは大阪の件数が減ったからではなくて全国の件数が増えたからである。

表6-2同書より転載 拡大画像表示

統計では見えにくい
いじめの実態

 次にいじめについてみてみよう。2007年度から2022年度にかけて、大阪のいじめの認知件数は、小・中・高等学校と特別支援学校を合わせて3682件から6万5500件に増えた。1000人あたりの件数は3.8から75.2へと増えた。一方、全国では7.1から53.3への増加である。大阪の伸び率が全国を大きく上まわっていることがわかる。

 ここでひと言つけ加えておかねばならない。それは統計に表れた件数が少ないからといって問題が解決しているとは言えないということである。不登校や中退には欠席日数や退学手続きという客観的な基準がある。だが、いじめや暴力に客観的な判断基準を求めることは難しい。特にいじめは態度や言葉による「みえにくい」ものを含み、その実態はつかみにくい。いじめと生徒間の暴力との線引きもはっきりとはできない。また、そもそも統計に表れる暴力行為やいじめの件数は「発生」ではなく「認知」の件数である。暴力行為やいじめが社会問題になると、それらの件数は一時的に跳ね上がり、しばらくすると件数が減るということが繰り返されてきた。逆に、学校がこれらの問題に真剣に取り組むようになれば認知件数は増える。

 このように、暴力行為やいじめの実態把握は難しいのだが、これらの教育課題が解決をみていないことだけは確かである。