忘年会に新年会、クリスマスや年越し、正月の集まりなど、食事の管理が難しい年末年始。食べ過ぎ、体重増加が気になる人にぜひ読んでほしい1冊が『英国の専門医が教える 減量の方程式』だ。
著者はオックスフォード大学医学部を首席卒業後、食欲や体重管理の研究でイギリスを代表する減量専門医のサイラ・ハミード氏。イギリスで深刻化する肥満人口増加を食い止めるべく、「フル・ダイエット」と呼ばれる減量プログラムを考案。参加者たちは平均16キロ減量、糖尿病の改善、血圧低下など、科学的にめざましい効果が実証された。
ついに刊行される日本語版の本書から、今回は「言葉」が目標達成に影響する力について、特別に抜粋してお届けする。

「そりゃ三日坊主だわ…」目標達成できない人の意外な口グセ・ワースト1Photo: Adobe Stock

ネガティブなセルフトークの科学

 言葉は、意識的に情報を伝達するための単なる手段ではありません。ここでは「怠け者/欲張り/偉そう」といったネガティブで自己批判的な言葉が、扁桃体と呼ばれる脳の部位で恐怖反応を引き起こす仕組みを説明します。

 扁桃体は、脳が危険を感じると反応します。あなたが自分自身に語りかける否定的な言葉も、危険なものと見なされます。そして、すぐに身体の化学反応を変化させます。

 その結果、ストレスホルモンであるコルチゾールが体内に充満し、体重増加が促されます。アドレナリンが分泌され、「闘争・逃走反応」が起こり、脅威に対して神経過敏になり、警戒心が高まります。緊張や不安、不快さを感じます。

 脳の門番はこの状態に入ると、危険や問題の存在を確認する情報を優先的に受け入れるようになり、それによってネガティブな思考の連鎖がさらに加速されます。

 こうした状態にあるとき、泳ぎに行ったり、プログラムの健康的な夕食を作ろうとしたりすることは非常に難しく感じられるようになり、ときには不可能だと思えます。「人は批判で枯れ、賞賛で伸びる」というのは、科学的にも裏付けられた知恵の言葉なのです。

 否定的な言葉は、脳の危険反応を引き起こす脅威になります。けれども、解決策はあります。新しい、ポジティブな言葉を選ぶことです。そして、それは完全にあなたのコントロール下にあります。

自分を閉じ込めてしまう口グセとは?

 普段、自分が使っている言葉に目を向けると、可能性を狭めるような表現があることに気づくかもしれません。冗談のつもりで、自分のことを「年寄り」「不器用」「のろい」「無駄な肉がついている」などと表現していることも当てはまります。

 もうおわかりのように、こうした冗談は、無意識のうちに「それが私だ」というメッセージを自分に伝えているのです。脳は、その自己イメージを裏付ける情報に注意を向け、優先的に受け入れようとします。その結果、それは減量という目標を達成するうえでの妨げになるのです。

 また、微妙に否定的なセルフトークにも注意すべきです。「ただの……」という言葉もその一例です。

 たとえば、誰かに職業を聞かれたとき、「ただの……です」と答えることはないでしょうか。本プログラムで新しい言葉遣いを学ぶ前は、参加者の多くも次のように答えていました。「ただの専業主婦です」「ただのパートです」。

 この、「ただの……」という些細な表現は、実は大きなマイナスの影響を私たちに及ぼします。このような言い方はせず、自分の仕事に誇りを持っていることを暗示する言葉を選びましょう。「私は……です」と言えばいいのです。

(本稿は、『英国の専門医が教える 減量の方程式』を一部抜粋・編集したものです)