伝え方ひとつで、人は行動を起こしたくなる

 『伝え方が9割』がこれだけ注目された理由として、「モチベーション」があると思います。バブル崩壊以来、多くのサラリーマンを悩ませているのは、なぜ働くのか、なぜこれをやるのかという「モチベーション」。たとえば、CMのプレゼンをするときにも、佐々木さんのように相手のモチベーションを想像して話さない限り伝わりませんよね。

佐々木 質問ばかりですが(笑)、ここで言われている「モチベーション」というのは?

 たとえば、何かの商品を売っている営業マンがいるとします。彼はお客さんから聞いたこともないくらいの罵詈雑言を浴びせられて、疲れきって、それでも黙って頭を下げて、一生懸命に商品を売らなくちゃいけない。

 そこまでつらい思いをしてまで仕事を続けるのは、家族を養うためかもしれないし、自分が出世したいからかもしれない。あるいは、もう少しいい暮らしがしたいからかもしれません。でも、どんな理由があるにせよ、最終的にはやっぱり「この商品を売りたい!」というモチベーションがないと、萎えてしまいます。

 モチベーションを生み出すためには、経営者が、我が社はどういう理念を持っていて、どういうビジョンがあるのか、それを簡単に一言で言えることが求められる時代です。「あなたの会社は、どういう会社ですか?」と聞かれて、説明に5分もかかってはもうダメ。

 ムチで叩かれるようにきついノルマだけ課されて、いつ首を切られるかもわからない。なんでこんなことをしなくてはいけないのか、それがまったくわからないようでは、今の若い人たちは働く意欲をなくしてしまいます。逆に「これを売りたい!」「これをやりたい!」というモチベーションさえあれば、少々、給料が安くてもやるかもしれない。つらい時代ではありますが。

 佐々木さんの本の中に、「伝え方は学べる。それを知っている人は少ない」というコピーが出てきますよね。これを聞くと「ああ、知っていてよかった。学びたい!」と思って、モチベーションが上がるでしょう?

佐々木 なるほど。この本に書いてあることは、もともと僕が持っていた能力ではありません。やらなければならないから、繰り返しやることで自然にできるようになったものです。そういう技術を、普通の人の日常にブレイクダウンしたらどうなるかを考えて書きました。

 子どもが言うことを聞かないときになんて言うかとか、好きな女性に何と言ったらデートに誘えるかとか。伝え方ひとつで、毎日の生活をすてきに変えられるんじゃないかって。

変えるための原動力になるのが「モチベーション」です。この20年間、僕自身が一番悩んだのも、そのモチベーション。なんで生きてるんだろう、なんでこんなことをしなくちゃいけないんだろう……。そういう、自分の意味の問いかけを続けてきました。

 フックが効いた言葉を聞くと、人はなんとなく行動に移したいと思うものです。伝え方やコミュニケーションの方法を工夫することで、モチベーションを上げることができる。この本には、そういうノウハウが詰まっていると思いますね。

次回は5月17日更新予定です。

「伝え方が9割」バックナンバー

第1回 無理めな、あの人に デートOKをもらうコトバとは??

第2回 チカン多発地域!ある看板をつけたら チカンが発生しなくなった、そのコトバとは??

第3回 困った自転車放置!ある看板をつけたら放置がなくなる、そのコトバとは?

第4回 子どもが言っても勉強しない!言い方を変えたら、勉強をはじめたそのコトバとは?

第5回 いままで伝えることが苦手だった人のほうが、この方法で劇的に人生が変わる【本田直之×佐々木圭一】(前編)

第6回 伝える技術って、相手のことを想像する技術でもあるんです。【本田直之×佐々木圭一】(後編)


【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】

価格:¥1,400(本体)
四六判・並製 ISBN:978-4-478-01721-0

◆佐々木圭一『伝え方が9割』

入社当時ダメダメ社員だった著者が、なぜヒット連発のコピーライターになれたのか。本書には、心を揺さぶる「伝え方の技術」が書かれてある。膨大な量の名作のコトバを研究し、「共通のルールがある」「感動的な言葉は、つくることができる」ことを確信。この本で学べば、あなたの言葉が一瞬で強くなり人生が変わる。

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姜尚中(カン サンジュン)『

価格:\1,260円(税込)
四六判 288ページ
ISBN:978-4-08-781523-8
刊行:集英社

痛切なる告白の瞬間!
先生と学生の心の交流。『母—オモニ』から三年ぶりの長編小説

君に私の息子の最後の言葉を贈りたいのです。
親友を失った青年と、ある秘密を抱えた先生の間で交わされたメールを軸に織り成す、喪失と再生の物語。あの『悩む力』の著者が、苦難の時代を生きる若者たちに真剣に向き合った、注目の長編小説。

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