前作『母-オモニ-』から3年ぶりの長編小説『』を上梓したばかりの姜尚中氏と、『伝え方が9割』が2ヵ月で25万部を突破するベストセラーとなっている佐々木圭一氏。「団塊の世代がしてきたコミュニケーションでは限界を感じ、みんなが伝わらないことを意識し始めたのではないか」というポイントから話は始まりました。(構成・井上健太郎 写真・小原孝博)

コミュニケーションのあり方を模索している時代

 僕もこれまで大学で教えたり、テレビに出たり、自分自身を「伝える人」だと思っていたんですが、佐々木さんの『伝え方が9割』を読んで、目から鱗が落ちる部分がたくさんありました。阿川佐和子さんの『聞く力』が売れたこともそうだし、今、多くの人がコミュニケーションのあり方を模索している時代なんだと思います。

 この本には、どうやったら人にうまく自分の気持ちを伝えられるのか、というテクニックが具体的に書いてある。それがたぶん、今の時代に合っているんでしょう。ここに書いてあるのはすべて、佐々木さんがふだんの仕事の中で実践していることですよね?

佐々木 はい。僕が実践しているポイントだけを書いているので、自分の中から湧き出たものだけを入れています。

 もともと僕の両親は、あまり人に伝えるのが得意ではなくて、僕もそれを受け継いでしまったんですね。父は理系で、システムエンジニアの仕事をしていて、しかも転勤族。転校すると、言葉が違うというだけで注目されたり、笑われたり。人と話すことが怖くて、家でゲームばっかりやっているような子どもでした。

 やっぱりそうでしたか。この本を読んでいて、佐々木さんにはおそらく、「ノマド的なところ」があるんではないかと感じていたんです。

「ノマド的」というのは簡単にいえば、ひとつの場所に定住していないということ。僕のように田舎に長くいた人間は、土地に対するアタッチメントが強いから、定着農民的な発想をします。僕は、高校を卒業してからやっとノマド的になって、東京に出てきてから10ヵ所以上住まいを転々としたり、海外にも行きました。そうすると、自分の持っていた、ひとつの型にはまっていないと不安だという性質が崩れていく

 ノマド的ではない人には定型化されたパターンがあって、コミュニケーションの仕方についても、お互いにわかるだろうというふうに考えます。そういう人からは、この本にあるような発想は出てこないし、具体的なノウハウを文章化するなんていうことは、なかなかできないと思ったんです。

 ある意味で、この本は、グローバル化の流れに合っているんでしょうね。グローバル化というのは、ノマド的なところがありますから。この10年くらいで、日本の社会もずいぶん変わってきたでしょう?