「あなたは人生というゲームのルールを知っていますか?」――そう語るのは、人気著者の山口周さん。20年以上コンサルティング業界に身を置き、そこで企業に対して使ってきた経営戦略を、意識的に自身の人生にも応用してきました。その内容をまとめたのが、『人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』「仕事ばかりでプライベートが悲惨な状態…」「40代で中年の危機にぶつかった…」「自分には欠点だらけで自分に自信が持てない…」こうした人生のさまざまな問題に「経営学」で合理的に答えを出す、まったく新しい生き方の本です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集します。

そうだったのか…「人生の後半で活躍できる人」の条件を的確に言語化した一冊とは?Photo: Adobe Stock

人生の後半では「異なる知性」を活用する

 加齢によって訪れる変化はネガティブなものだけとは限りません。

 本書で述べている通り、人間は中年期に入ると前頭前皮質の働きが低下し、素早い分析や創造的な発想=流動性知能は低下していきますが、既知の概念を組み合わせたり、複雑な概念を他者にわかりやすく表現したりする能力、結晶性知能の水準は逆に向上するということがわかっているからです。

 本書では「人生の秋」以降のステージに入っている人たちに求められる組織や社会における役割として、後進に機会を与え、育て、支える「サーバントリーダーシップ」について取り上げますが、このリーダーシップスタイルを発揮するためには高い水準の結晶性知能が求められます。

 つまり、私たちは人生のステージにおいて、それぞれの得意・不得意を持っており、ステージの遷移にしたがって、それらの変化を意識的に使い分けていくことが重要だということです。

 これは多様性の問題として捉えることができます。昨今、多様性といえば、真っ先に「女性活躍」ということになり、これはこれでもちろん大事なテーマではあるのですが、多様性にはさまざまな軸があり、年齢というのもそのひとつだということを忘れてはなりません。

 私たちは一般に、どのような領域であれ、経験年数が増えることで全般的な能力や知識が高まっていくというイメージを持っていますが、ことはそう簡単ではありません。

 流動性知能と結晶性知能についてだけ考慮しても、若年者と年長者では「強みと弱み」が補完関係にあるわけですから、これを多様性という観点から捉え、双方が得意なことをやって補い合うような社会や組織が、これからやってくる社会では求められます。