みんながそれぞれの力を発揮して成功させた『世界ポリオデー2011』

 洋子さんとの関わりのなかで忘れられないのは、2011年に始まった、3年で世界からポリオを撲滅させようというJIGH(Japan Institute for Global Health)のプロジェクトです。

「コミット」とは仲間に対する覚悟である<br />――多くのプロジェクトを回していく秘訣とは?<br />【経営戦略ストラテジスト 坂之上洋子<br />×ビズリーチ代表 南壮一郎】(前編)南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。2007年、株式会社ビズリーチを設立。エグゼクティブ向けの転職市場に特化した、日本初の個人課金型転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。2012年、ビズリーチのアジア版「RegionUP(リージョンアップ)」をオープン、2013年2月、IT・Webスペシャリストのための仕事探しサイト「codebreak;(コードブレイク)」ベータ版をオープン。

 ビルゲイツ財団との橋渡しをしながらポリオの撲滅運動に協力していくJIGHという団体を日本につくるのにあたり、東京大学の教授が洋子さんに協力をお願いしたんですよね。洋子さんがお手伝いしていくなかで、「南さん、こういうプロジェクトがあるんだけど一緒に手伝ってくれない?」と声をかけてくださって。あのメンバーのなかでは、僕が唯一の起業家でした。

坂之上 あのプロジェクトを一緒にした人たちは濃かったですよね(笑)

 2011年11月24日、東京タワーの色を紫にライトアップして『世界ポリオデー2011』が始まったのですが、私たちはチャリティレセプションや記者会見などの企画を裏方で仕切っていったんです。

 「どうしたら新聞に取り上げてもらえるだろう?」、「東京タワーの色を変えたらどうかな?」なんて話し合いながら。ポリオのワクチンが紫色だから、紫色にライトアップさせようというアイデアが上がったんですよね。

 そして、そのことがニュースで特集されて。「洋子さん、ニュースで取り上げられていますよ!」とか言いながら、みんなで六本木の路上でワンセグを覗き込んだ時は、すごく感動しました。そのあと、全員でハグしあって。このプロジェクトをやってよかったな、と。

坂之上 そうそう、ポリオデーの記者会見は外務省で行うことができたんですけど、外部の団体が外務省に入って記者会見をやるのって、おそらく初めてのことだったんです。最後までどうなるかわからない交渉が続いたのですが、プロジェクトに関わった人たちはみんな優秀だったから、あんな大変な時も笑いがたえなかったですよね。

 しかも、みんなが凄いパワーを持っている人たちだった。それぞれが個人で動けて、ネットワークを持っていて、仕込みができる。そんなプロフェッショナルな人たちばかりが、ボランティアで協力してくれたから迫力があってよかったんだと思います。

坂之上 最終的に政府からパキスタンに約50億円の貸し付けが決まり、紛争地帯にもワクチンが行き届くことになりました。日本の現地での信用力のなせるわざです。そしてパキスタンがポリオを撲滅できたら、その返済についてはビルゲイツ財団が全額を日本に払うことになっていて。そんな画期的な仕組みのまさに裏方で、すごくやりがいのあるプロボノ活動でしたよね。

 ある意味、洋子さんもJIGHに巻き込まれて、僕も洋子さんに巻き込まれた。だけど、結果的にとても面白い経験だった。だから、興味がわいたことに主体的に巻き込まれてみるという姿勢って重要だなと思うんです。