覚悟を持って引き受け、信頼できる仲間に任せる

 いまはどんなプロジェクトにかかわっているんですか。

坂之上 政策シンクタンクのJIGH、国際機関のアジアパシフィックアライアンス、NGOのシビックフォースかものはしプロジェクト、モザンビークの貧困層支援のアシャンテママ、地域支援の熊西財団、不登校発達障がいの子どもたちのためのスマイルファクトリー、観光庁、東大、あとは、個人的に支えている政治家の方々と企業CEOの方々へのアドバイスかな。あ、最近グローバルに活躍するNGOの代表が集まれる連携組織を立ち上げました。あと、時々はエッセイを書いてます。

 量が半端じゃないですね。でも、旦那さんも娘さんもいて、ファミリーライフもある坂之上洋子という人は、一人しかいませんよね。けれど、時間は24時間、週7日しかない。どうやってバランスをとっているんですか。

坂之上 それは、仲間に任せる“南方式”ですよ(笑)

 最終責任者としてプロジェクトを眺めると、欠けているピースが見えてきます。そこを埋める人材や要素を見つけてきて、はめ込むんです。そして、回してみる。私は、回してみて「あれっ?」と思うところを直しているだけ。上手くいったら任せてしまって、ほかのところをやりにいく。

 組織コンサルタントみたいですね。

坂之上 「経営戦略ストラテジスト」と言っています。主にブランディングをやっているんだけれども、みんなはブランディングというとデザインだと考える。もちろん、デザインも必要なんですよ。必要だけれど、なかのパーツがちゃんと動いていないと。

 かかわっている仲間の動きが大切なんですね。

坂之上 そうです。だから、プロジェクトそのものや、一緒に働くチームの人たちに絶対的な信用とか愛を感じないとコミットできないです。

 特に民間企業の仕事は、受けるまでに相当な時間をかけて考えます。私の場合は、考えている間に3回ぐらい社長が自宅に来て、頭下げられてしまって、断りきれず「う〜ん、わかりました。やります」みたいなケースが多いですね。(笑)。

 そのぐらいのパッションとエネルギーを持って当たって来てくれないと、洋子さん自身もコミットできないということなのかもしれませんね。

 この間、「コミット」とは日本語でどういう意味かと聞かれたときに、「覚悟」だと答えたんです。覚悟というとリスクみたいに感じるけれど、信頼という意味を含んだ覚悟。何があっても、この人と最後まで頑張るという意味での覚悟です。

坂之上 そう、そう。強い覚悟が必要だから、簡単にプロジェクトを引き受けることができないんです。その代わり、受けたら絶対に損をさせない仕事をする覚悟はして臨むんです。