身近なニュースサイトに出てくる「ハイドロクライメート・ウィップラッシュ(水文気候の急変動)」という言葉に注意してほしい。これはロサンゼルスの山火事を説明するため、もっとあからさまに言うと、「サンタアナの風」に伴って発生することが多い山火事を州政府や地方自治体が食い止められなかったことから話をそらすために、環境重視の左派が突如使い始めた用語だ。
この説によると、カリフォルニア州で2023年と24年の冬季にとりわけ雨が多かったのは気候変動が原因で、これにより植物が青々と成長したという。砂漠で花が咲き、野草が爆発的に増えたというニュースを覚えている人もいるだろう。しかし同じ説によると、ここ数カ月は気候変動のせいで日照りが続き、植物が燃えやすくなったという。それゆえに「ハイドロクライメート・ウィップラッシュ」と呼ぶ。
それは雨期と乾期は気候変動で説明できるという考え方であり、それは恐らく地震以外のあらゆる自然災害は気候変動によるものだという進歩主義の主張と合致している。気候変動の正統派によれば、悪天候は常に人為的なものだ。
この考え方は、かねてカリフォルニア州の気候は雨の多い年と少ない年を繰り返してきたという事実を無視している。州環境保健有害性評価局のグラフでは130年ほど前からの州内の降水量が示されている。湿潤年と乾燥年は昔からあった。ここ数十年は乾燥年の方が多いが、炭素排出量が現在よりもはるかに少なかった1910年代と1920年代も同様だった。
気候は変動しており、人間の活動は気候に影響を与える。だが、カリフォルニア州の降雨・降雪パターンが変動するのは予想されることだ。その結果として火災が発生する。行政当局者の責務は山火事を気候変動のせいにせず、山火事に備え、必然的に火災が発生した場合の被害を軽減することである。
ギャビン・ニューサム州知事と州議会、ロサンゼルスの歴代市長はこの点で失敗してきた。ニューサム知事が10日に示した予算案から判断する限り、知事は失敗を続けたいようだ。予算案は、メディケイド(低所得者向け医療保険)やグリーンエネルギー、教職員組合向けの支出を増やす一方で、山火事予防の予算は出し惜しみしている。