「のりしろ」論、物価目標の重要性主張
「語られなかった」円安への影響
日本銀行は昨年12月19日、「金融政策の多角的レビュー」(以下「レビュー」)を公表した。
2013年から実施された大規模な金融緩和、いわゆる「異次元緩和」については、主に以下の結論が盛り込まれた。
第一に、国債市場の機能への影響など一定の副作用はあったが、全体として経済にプラスの効果があった。第二に、それでも異次元緩和で用いられた非伝統的な政策手段(国債の大量買い入れなど)の効果は、伝統的な政策手段(短期金利の上げ下げ)よりも不確実である。
したがって第三に、非伝統的な政策手段に頼らなくてもよいよう、短期金利の下げ余地、すなわち「のりしろ」を持っておくことが望ましい。第四に、そのためにも2%物価目標の達成が重要だ、というものだ。
日銀は異次元緩和をすでにやめて利上げ局面に入っており、その意味では、レビューが植田日銀の金融政策に与える含意があるとすれば、「金利のりしろ」論と2%物価目標の重要性ということになる。
ただし1月23、24日に予定される今年最初の金融政策決定会合で利上げがあるのかなど、当面の政策運営で利上げのタイミングを左右するのは、為替動向だ。
だがレビューでは、円安の問題やほかにも異次元緩和で最も批判の強かった重要問題の評価がスルーされている。