選択肢を見てみると……

そう考えると、選択肢の中で「暗に示している」というニュアンスがないものや、「直接的に示されているもの」は間違いであると考えることができます。たとえば、この問題の4番の選択肢はこうなっています。

観光の現場では、観光者は他の観光者を見る存在であると同時に他の観光者から見られる存在でもある。同時にサファリパークでも、動物を見る他の客の邪魔をしないよう注意を払ったり、他の客と一緒に動物を観察しようとしたりする。このようにサファリパークは、観光者相互のコミュニケーションのあり方に注意を促す点で示峻的である。

この選択肢の文章は、「何かを暗示している」というニュアンスが薄いですね。それに、最後の「注意を促す」っていうのも、間接的な言い回しではなく、直接的な表現ですよね。ですから4番はなんとなく間違いなのではないか? と考えることができます。また、2番の選択肢を見てみましょう。

植民地住民の「展示」では、見る主体と見られる客体が恣意的に固定される。一方でサファリパークでは、見る主体である人間が動物の暮らす場に入っていくことで、動物の欲望のまなざしにさらされる客体にもなる。このようにサファリパークは、見られる側に強いられる一方的なまなざしが、見る側にも向けられる場である点で示唆的である。

これは、設問の問題文にあった通り、「見る/見られる」を考える上で暗にこういうことが示されている、という説明になっているので、これが正解なのではないかと考えることができます。実際、これが正解です。

ちなみに、この選択肢の文の中の「恣意的」という言葉もとても重要です。これは、「自分勝手であること」という意味で、相手を非難するニュアンスの言葉です。この言葉の意味がわかっていないと、この選択肢の文の読解自体が難しくなってしまいます。

このように、共通テストでは「言葉を知っている人」のほうが得点できるような問題が出題されています。テクニック的なものを使う機会が減っていると言われる共通テストではありますが、「示唆的」「恣意的」と言った頻出ワードを覚えることで攻略が可能なのです。ぜひ、知っておいていただければと思います。