契約書には調査費用の明細が記されていませんでした。見積もり金額は30万円と、調査の必要経費と人件費を丸めた金額提示のみで、調査員の人数と1時間当たりの単価は不記載でした。
「勝手が分からず疑問には思いましたが、担当者の人柄から安心してお任せしてしまいました」
さらには「『必要に応じて調査延長や追加調査を行う』という文言があったものの、延長・追加調査の料金について、明確な記載は一切ありませんでした。調査中の報告もないため、確認しようがありません」
私は美紀さんに「この金額を支払う義務はありません」と伝えると、彼女はほっとした表情を浮かべました。しかし、まだ問題は解決していません。
私は彼女に代わり、この悪徳D探偵社と直接交渉を行うことを提案して、任せてもらいました。
探偵業者が依頼者から求められたら
出さないといけない情報とは
D探偵社に連絡すると、最初は強気な態度でした。「契約書に基づいて請求している。調査中の撮影データは処分した」と繰り返すばかりで、請求の減額には応じません。恐らくそのような対応をしてくるだろうと思っていたので、D探偵社の不正を暴く準備を進めました。
まず、私はD探偵社が過去にどのような手口で被害者をだましていたのかを徹底的に調査しました。SNSや口コミサイトを調べ、同様の被害を訴える投稿を発見しました。それらの情報から、D探偵社が美紀さんに行った行為はパターン化しているようでした。
次に、私はD探偵社が提出した調査報告書から、調査開始時間や終了時間について、D探偵社に対して詳細な説明を求めました。予想通り「調査中の撮影データは処分した」との一点張りでしたが、公共交通機関を利用した履歴・ガソリンの給油領収書・高速道路通過履歴など時刻が分かるものの提出を求めました。
開始・終了時間の目安になる情報であり、依頼者から提出を求められたら断れない情報なのです。
さらに「このままでは法的措置や行政への通報に至る可能性がある」と伝えつつ、情報開示を求めたところ、D探偵社は調査員2人で稼働時間も大幅に過剰請求したとの事実を認め、見積もりの30万円のみ(調査員2人体制で10~15時間の調査では探偵業界において妥当な見積もり)の支払いにて調査契約を終了することに合意しました。
交渉に応じたD探偵社の社長から、美紀さんを担当した調査員が単独で行った不正行為のため解雇したと聞きました。もしかしたらD探偵社のトカゲの尻尾切りかもしれませんが。