メッセージの一貫性

 会社の理念や価値観に基づいた一貫したメッセージを用意する。メディアやSNSで伝えるメッセージにブレがないよう、複数の状況での回答を練習する。

感情のコントロール

 記者から厳しい質問や批判を受けても、冷静さを保つ訓練を行う(予測ができていれば、頭に血は上りにくい)。ストレス下での発言や態度が一貫するように、ロールプレイを活用する。

透明性と行動計画の提示

 失敗の原因を説明するだけでなく、再発防止策や今後の行動計画を具体的に伝えるスキルを練習する。問題解決に向けた前向きな姿勢をアピールする。

 これらの訓練をすると、どんな人でも格段に「失敗の弁明力」が上がる。訓練自体が高額なため、経営者や役員くらいしかこのトレーニングをやることはないが、出世したい人は自腹を切ってでもやった方が良いだろう。

失敗の対応が
出世の明暗を分ける

 冒頭で述べたように、失敗を弁明するスキルは、キャリア形成において極めて重要なスキルである。というのは、出世させるかどうかを決める経営幹部は、部下の失敗そのものよりも、それにどう対応するかを重視しているからだ。

 普段の仕事がいくらできても、失敗の際に責任を認めず、形だけの反省で終わらせる姿勢が見られれば、「いざというときに頼れない」と判断されるのは当然のことだ。一方で、誠実に失敗を受け止め、それを糧に次の改善策を示すことができる人材は、組織内で信頼を築き、昇進の可能性を高めることができる。

 失敗の弁明のスキルは十分に学習可能である。もしあなたが経営幹部を目指すなら、このスキルを磨くことは必須だ。もっと言えば、失敗しない人はいないのだから、全ての社員がこうした訓練をすべきなのかもしれない。

 そのために、まずは、自分の過去の失敗をしっかり振り返り、十分な分析を行って問題の核心を具体的に言語化する(自分の失敗をプレイバックし、直視するのは本当につらいものだが)ところから始めていただきたい。

(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)