この社員の弁明を聞いていた社員や上司たちは、その姿を見て内心こう思ったはずである。

「この人は問題を正面から捉えられないタイプ。責任を負うポジションには不向きである」と――。

 具体的に直接社員や上司からその評価を聞いたわけではないが、その場に漂う空気から、弁明が裏目に出ていることがありありと伝わってきた。こういった悪い印象はあとあとまで強く残る。近い将来によほど上手に挽回しない限り、この人は出世の階段を上っていけないだろう。

 では、なぜそのように感じたのか。

 これを分析するために、まずこの人は弁明する際に「何を話しているか」という話の内容、次に「振る舞いや言葉のトーンはどうだったか」という非言語的な要素、この二つの観点から考えてみたい。

「反省している」と言いながら
中身が伴わない

 まず説明の内容だが、具体性が欠けていた。原因を話しているようでいて、全てが漠然としており、「どのような判断ミスをしたのか」「どんな行動が結果に結びつかなかったのか」という中核にまで思考と分析が至っていない。

 例えば、「次回はもっと市場調査を徹底します」と彼が述べた時、上司の一人が「具体的にどういう調査を想定しているのか」と質問したところ、その人は答えに窮していた。これは、言葉では「反省している」と言いながら、実際には本質的な問題を自分で掘り下げていない典型例といえる。

 また、彼の話し方や態度にも誠実さがあまり感じられなかった。

 視線はほとんど上司たちを避け、手元の資料ばかりを見ており、声のトーンは軽い。謝罪と反省の場面であるにもかかわらず、どこかこの場をやり過ごすことだけを考えているかのような早口で、上司が何か指摘するとすぐに「でも、それは……」と弁解に走る様子が目立った。

 これでは、誠意を持って説明しているという印象を与えるのは難しい。特に声のトーンの軽さは印象の観点からいうと致命的で、「真面目にやれ!」と上司たちの怒りを生んだに違いない。

 この事例は、いわゆる「失敗の弁明」の典型的な失敗事例といえる。ただ、これらのようなことは誰もがやりかねない。