不動産バブル崩壊でデフレが深刻な中国
景気刺激策の効果が見えない
24年の中国経済は、個人消費が伸び悩む一方、その分を輸出によって埋め合わせた。この状況に、トランプ政権の財務長官は、「中国は深刻な景気停滞のリスクから、輸出の増加によって抜け出そうとしている」と指摘した。
内需の不足は、主な需要項目から確認できる。24年の輸出は前年比5.9%増だったのに対して、輸入は前年比1.1%増だった。景気低迷で輸入が伸び悩む中、政策の影響もあり輸出が伸びた。特に、米国の規制強化に備えた駆け込み需要で半導体が増えた。
一方で、天然ガスの輸入は伸び、25年はさらに増加することが見込まれている。また、個人消費は同3.5%増、インフラ投資は4.4%増加だった。
24年の名目のGDP成長率は、実質ベースの値を0.8ポイント下回った。物価の総合的指標の一つであるGDPデフレーターはマイナスと考えられる。名目と実質のGDP成長率の差からも、デフレ圧力が高まっていることが分かる。内需が減少し、国内のモノやサービスの価格が広範囲に下落したということだ。内需の弱さ、外需依存の高まりという中国経済のアンバランスさを示す。
中国政府は内需の増加を目指して矢継ぎ早に経済対策を実行している。24年7月にはEV買い替え補助金を増やした。続く9月には追加の利下げ、国債や地方債の増発によるインフラ投資やマンション在庫の買い入れ拡大策も導入した。
それでも、個人消費や設備投資は伸び悩んだ。これは過去の中国経済ではあまり見られなかったことだ。
振り返ればリーマンショック直後、中国政府は大型の経済対策を発表した。その後の景気の回復は急ピッチで進んだ。中国の消費者や企業経営者は、政策で景気回復した過去の経験を頼りに、経済対策で景気は上向くと考えたはずだ。
しかし現在は、さまざまな経済対策が出されているにもかかわらず、景気は減速している。不動産バブルが崩壊し資産価格が下落して、リスクテイクに躊躇する企業や投資家は増えた。個人の節約志向も高まっている。消費刺激策の効果を不安視する人が増加していることは間違いない。