ベトナムやブラジルも中国を批判
米中で「貿易戦争」は不可避か

 トランプ政権の財務長官は議会公聴会で、「中国に対する関税の引き上げは、不公正な慣行を是正するために必要だ」と主張した。トランプ大統領は、自国の貿易赤字は「悪いこと」と考えている。米国は、中国に対する関税を引き上げるだろう。

 また、ベトナムやブラジルは、「中国の安価な鉄鋼製品の流入が自国企業の収益減少につながっている」と批判している。欧州委員会も、「中国の自動車、脱炭素関連の機器(風力発電のための風車)などがEU域内産業に脅威だ」との見方を示した。中国に対する主要先進国、新興国からの懸念が高まっている。

 本来であれば、中国は内需の創出に政策のかじを切るべきだ。まずは不動産関連の不良債権処理を実行し、規制緩和を進めて新しい需要を創出することも重要だ。

 ところが今のところ、中国政府の実際の政策運営はそうはなっていない。依然として、大手不動産デベロッパーの経営再建にめどが立たない。24年、中国の不動産投資は前年比10.6%減、販売面積は同12.9%減だった。中国政府にとって、不動産デベロッパーの債務問題はもはや深刻過ぎて手が付けられないのかもしれない。

 不動産バブルが崩壊して、地方政府の土地利用権の譲渡益も減少した。財政悪化は社会保障の悪化に直結する。債務問題を背景とする資産価格の下落、年金や医療の負担が増えることで、家計の節約志向は高まるだろう。そうするとますます、内需の弱さを補うため、中国は輸出増加を重視せざるを得なくなる。

「中国がデフレを輸出している」――こうした批判は今後ますます増えるはずだ。米国が中国に対して想定以上の追加関税の適用を示唆し、一方の中国が報復することも考えられる。自動車を中心に貿易戦争が勃発するリスクは上昇傾向にある。こうなってしまうと、中国経済のいびつさは一段と深刻化するだろう。