自動車の輸出を重視するあまり
過剰生産で他国にもしわ寄せ

 中国政府は経済成長率の目標を実現するため、主に自動車輸出を重視せざるを得なくなっている。24年の自動車輸出は、前年比19.3%増の586万9000台だった。

 政府が産業補助金などを積み増し、土地の供与も行うことで、BYDなどのEVメーカーは価格の引き下げに成功している。EVメーカーだけでなく、CATLのような車載用バッテリーメーカー、上海エナジーなどバッテリー部材サプライヤーの競争力向上も同様だ。

 ただし、こうした補助金を目当てにしたことで、生産能力の過剰に拍車がかかっている。24年の新車販売台数は3143万6000台。推計の一つによると、中国の年間自動車生産能力は5000万台に上るとみられる。中国国内で行き場を失った低価格エンジン車、EVなどがアジア、南米、ロシアなどに流入した。

 輸出で経済成長を維持した結果、貿易黒字は拡大した。24年のドル建て貿易黒字は、前年比21%増の9921億ドル(約155兆円)だ。自動車が同16%伸びたのに加え、家電は同14%、パソコンおよび部品は同10%と増加した。

 地域別に見ると、ASEAN向けの輸出は同12%増、EU向けが同3%増、米国向けも4.9%増えた。特に24年の後半は、トランプ政権の関税引き上げに備えるため、中国から駆け込み的に輸入を増やし在庫を確保する動きが米国の対中輸入増につながった。

 一方、中国が主に輸出で経済成長を維持したことで、他の国にしわ寄せが及んだ。欧州委員会は24年10月、域内の自動車産業を守るため、中国製EVへの追加関税を実施した。また、タイでは、中国製の安価な自動車が流入した結果、自動車の需要が減少した。

 中国が輸出促進策を続けると、経済のアンバランスさは深刻化するだろう。それに伴い、他の国にも悪影響が及ぶと懸念される。現在の中国経済が、持続可能だとは考えづらい。