1991年大ヒットドラマの影響で
CD売上が初めてのミリオン超え

 この時代、音楽消費を支えたのはCDプレイヤーの存在だ。レコードからCDに徐々に置き換わり始めると、90年代には1000円で手頃に買える8センチ・シングルCDが広く流通した。さらに、カセットテープとラジオが聴けるラジカセにCDの再生機能が追加された「CDラジカセ」が安価になり、一般の家庭に広く浸透した。リスナーは、CDからカセットテープに楽曲をダビングし、マイプレイリストを作成した。

 80年代後半から徐々に伸びてきたCDの売上は、1991年に初めてミリオンを超えることになる。

 1991年にミリオン超えを達成した楽曲、それは小田和正の《ラブ・ストーリーは突然に》とCHAGE and ASKAの《SAY YES》である。1991年に放映された『東京ラブストーリー』は最終回視聴率が32.3%(関東地区)を記録した大ヒットドラマである。このドラマの主題歌こそが《ラブ・ストーリーは突然に》であった。

 じつはこのヒットには、ドラマ史上初の試みが関係している。

『東京ラブストーリー』までのドラマ主題歌は、冒頭のタイトル部分などで流れることが主流で、ドラマ内に挿入されることはほぼなかった。しかし本作では、ここぞという盛り上がるシーンで主題歌を挿入するという手法がとられたのだ。

 ストーリーとのマッチングもさることながら、ドラマの盛り上がるシーンでの楽曲使用は、視聴者に強烈な印象を与え、シングル売上はミリオンどころか、ダブルミリオン超えの大ヒットとなった。

 この大ヒットをきっかけに、以降のドラマの主題歌でも同様の手法が用いられ、同年の『101回目のプロポーズ』の主題歌であった《SAY YES》もダブルミリオン超えの大ヒットとなっている。

 90年代と言えば、テレビCMでは、夏の風物詩である清涼飲料水や冬の風物詩であるスキー関連のCMが大量出稿されていた時代だ。その年のCM起用タレントやタイアップ曲は世間から注目され、何度も接触することになる楽曲は、そのままランキング上位に食い込むようになった。楽曲を聴いてCMの情景を思い浮かべる方も少なくないだろう。若者に人気のあった深夜番組帯にも、多くの楽曲タイアップCMが出稿され、アーティストにとってブレイクの登竜門的位置付けになった。