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2024年のNHK紅白歌合戦に初登場し、VTR出演のみかと思いきやサプライズで生出演し話題をさらったロックユニットのB’z。1988年にデビューし、90年リリースの『太陽のKomachi Angel』で初のオリコン週間シングルランキング1位を獲得(以降、50作連続1位!)。常にトップを走り続ける彼らは、多くのドラマやアニメの主題歌を担当してきたのも特徴のひとつ。彼らに限らず、90年代はドラマやアニメ、CMとのタイアップが大ヒットと密接に関わっていたという。そんな、CD全盛期90年代の「ヒットの方程式」について解説する。※本稿は、博報堂DYグループコンテンツビジネスラボ『令和ヒットの方程式』(祥伝社)の一部を抜粋・編集したものです。
ヒット曲を生むのに必要なのは
「みんなが知っている曲」にすること
1990年代と言えば、「トレンディドラマ」が大ヒットした時代だ。1991年の『東京ラブストーリー』を皮切りに、同年の『101回目のプロポーズ』、その後も『あすなろ白書』や『ロングバケーション』『ラブジェネレーション』といった視聴率の高い作品が並んだ。
一方、80年代後半に誕生したのが「深夜番組」だ。それまでは、各テレビ局には深夜番組枠というものはなく、深夜12時頃に放送が終了していた。深夜帯は、ゴールデン帯の番組にはない、特殊な面白さを持った番組が次々と生まれていった。これらが徐々に若者に受け入れられ、視聴率も上がっていった。
また、この時代に音楽消費行動におけるひとつのターニングポイントがある。カラオケだ。カラオケボックス自体は、80年代にはすでに全国で普及し始めていたが、1992年に通信カラオケが登場すると、曲数の多さや新譜リリースの早さによって人気を博し、その普及に拍車をかけた。
カラオケは、生活者の音楽消費行動に変革をもたらした。日常生活の中で「聴くもの」だった音楽が、コミュニケーションツール、遊びのツールとなったのだ。
カラオケの場を盛り上げるには、みんなが知っている曲を歌えることが必要になる。そのために、人々は音楽番組を観て、購入もしくはレンタルしたCDで歌を練習した。
若者の音楽消費の方法が多様化し、音楽に対する興味が高かった時代にあっては、「みんなが知っている曲」になることが重要だったのだ。こうして、ドラマ、CMとのタイアップ、大量宣伝によって曲の認知度を上げることが、ヒット曲を生む方程式になっていた。