【相続の落とし穴】1000万円の家が600万円扱いに? 家族が揉める理由
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。

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1000万円の家が600万円扱いに? 家族が揉める理由

 本日は「身近な人が亡くなったときの手続」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。

 遺産分割協議や遺留分の金額を決める際に、相続人同士で意見が対立しやすいのは「不動産の評価額をいくらにするか」という論点です。

不動産の評価で揉める理由

 役所で取得することができる固定資産評価証明書に記載されている金額は、「固定資産税評価額」という固定資産税を計算するために用いられる評価額です。

 この固定資産税評価額は、その不動産を実際に売却するとした場合の価格(時価)と比べると、かなり安い金額となっています。一般的には、固定資産税評価額は時価の6割前後に設定されているため、1000万円で売れる物件でも、固定資産税評価額は600万円を下回ることが多々あります。

 このように実際の売買価格と固定資産税評価額には大きな乖離があるため、固定資産税評価額を基準として遺産分割や遺留分を考えてしまうと、不動産を相続する人のほうが有利となります。そのため他の相続人が「この不動産の本当の価値がこんなに安いはずはない」と、不動産の本当の価値を巡って意見が衝突するのです。また、不動産の評価額には、固定資産税評価額以外にもさまざまな評価が存在します。

①時価…不動産を第三者に売却するとした場合の価格
②公示価格…国土交通省から標準的な宅地価格として公表された価格
③固定資産税評価額…固定資産税を計算するための評価額
④相続税評価額…相続税を計算するための評価額(時価の約8割)
⑤鑑定評価…不動産鑑定士が鑑定した評価額

 ちなみに、相続税評価額は、その不動産の使い方(自分で使うか、人に貸すか)次第で大きく変わりますが、固定資産税評価額は変わりません。

公平性を重視か、明瞭性を重視か

 公平性を重視するのであれば、①を遺産分割の基準として採用するべきですが、実際に売るわけでもないのに、不動産の時価を把握するのは困難です。3社くらいの不動産会社に無料査定を依頼し、その平均値を採用するか、不動産鑑定士に鑑定を依頼するのがいいでしょう。

 ただ、不動産会社に無料査定を依頼すると、その後に「不動産を売りましょう」と積極的なセールスをされますので、ご注意ください。明瞭性を重視するのであれば、③か④を採用する方法がよいでしょう。個人的にオススメするのは、①と③④の間をとる方法として、土地については④×1.25の価格、建物については③×1.3の価格が、おおよそ①の価格となるので、その価格を基準に遺産分割を考える方法です。これであれば、公平性と明瞭性の両面から見てもバランスがとれるでしょう。

どうしても意見がまとまらない場合は?

 調停をしても意見がまとまらない場合には、家庭裁判所が選任した不動産鑑定士が鑑定評価額を算出し、その評価額を基準とする方法が採られることが一般的です。その際、鑑定費用は相続人の負担となります。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)