健康のために運動を始めようとすると、筋トレと有酸素運動のどちらを優先すべきか迷う人は多い。どちらにも利点はあるが、その違いをどう捉えればいいのか。医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオン氏が書き、世界20か国以上で続々刊行されている『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』からヒントを紹介しよう。(ダイヤモンド社書籍編集局・三浦岳)

頭が悪い人は「筋トレをするか、有酸素をするか」で迷う。頭がいい人はどうする?Photo: Adobe Stock

どちらが大事なのか?

 健康やダイエットのために運動を始めようと決意したとき、忙しい人の多くがぶつかる壁がある。「筋トレと有酸素運動、どちらをやるべきか」という疑問だ。

 消費カロリーが多そうなランニングを選ぶべきか、それとも筋トレか。しかし、「どちらか一つを選ぶ」という前提そのものが、本質から外れている。頭がいい人が選ぶ答えはつねに一択だ。それは身も蓋もないが、「迷わずどちらもやる」である。

 医師で老年医学・栄養科学の専門家であるガブリエル・ライオンの『筋肉が全て』は、そんな私たちの運動やダイエットに関する常識を根本から覆し、真の健康への最短ルートを示す一冊だ。

 同書によれば、脂肪を減らそうと有酸素運動ばかりに偏ることは、かえって取り返しのつかない事態を招く危険性があるという。著者は、世間にあふれる誤ったダイエット情報に警鐘を鳴らし、次のように述べている。

 多くの人が心理的にも身体的にもストレスを感じている。矛盾したアドバイスのせいで、筋肉に悪影響をもたらすダイエットや、効果のない長時間の有酸素運動に誘導されてしまっている
 筋力トレーニングをせずに有酸素運動だけやっていたら、筋肉はつかず疲労がたまるだけだ。筋トレをせずにズンバばかりやっていたら、体重は減るかもしれないが筋肉まで減ってしまう。
 方法を間違えると、老化や病気に抵抗するための重要な身体組織――すなわち筋肉――が衰える
 適切な筋力トレーニングを行えば、体組成が改善されるだけでなく、ふだんの生活をしているだけでも健康的な代謝が実現する。――『筋肉が全て』より

 体重計の数字を減らすことだけを目標にして長時間の有酸素運動「だけ」を行うと、確かに脂肪は落ちるかもしれないが、同時に身体を守る重要な「筋肉」まで削ぎ落としてしまう。筋肉が減れば代謝は落ち、やがて太りやすく疲れやすい身体になってしまうのだ。

 だからといって、「有酸素運動は不要で、筋トレだけやればいい」というのも間違いである。有酸素運動は血圧を効果的に抑え、コレステロールや血糖値を適切なレベルに保ち、心機能や代謝を高めるために欠かせない

 重要なのは、有酸素運動に筋力トレーニングを加えることだ。そうすることで、運動の効果は飛躍的に高まる。

忙しくてもどっちもやる

 有酸素運動で心肺機能を高めつつ、筋トレによって代謝の受け皿となる筋肉の「鎧」を構築すれば、一度減らした脂肪が再び増えるリバウンドも防ぐことができる。

 実際、著者が推奨する1週間のトレーニング目標には、筋力トレーニングと有酸素運動(心肺トレーニング)の両方が含まれている。

「筋トレか有酸素か」と二項対立で考えるのをやめよう。大事なのは、限られた時間の中でも両方を無理なく取り入れることだ。忙しいからといってどちらかを切り捨てるのではなく、できる範囲で組み合わせる。

 それこそが、心身ともに豊かで健康な人生を手に入れるための、最も賢い「一択」なのだ。

(本記事は、ガブリエル・ライオン著『筋肉が全て━━健康・不老・メンタル、人生のすべてが変わる唯一の方法』に関連した書き下ろし記事です)

ガブリエル・ライオン(Dr. Gabrielle Lyon)
医師(DO)
イリノイ大学で栄養科学の学部課程を修了後、セントルイス・ワシントン大学において老年医学・栄養科学の臨床・研究フェローシップを修了。健康、パフォーマンス、老化、疾病予防におけるタンパク質の種類および摂取量の実践的応用に関する分野の専門家、教育者として活躍している。筋肉についての最新研究を網羅した本書は全米で大きな話題を呼び、ニューヨーク・タイムズベストセラー、ウォール・ストリート・ジャーナルベストセラー、USAトゥデイベストセラーとなり、世界各国での刊行が続いている。