これからの営業に求められているのは、単なる商品やサービスの販売にとどまりません。流通パートナーとの戦略的な協働や、お客様の価値創造、共感を生み出す取り組みこそが求められているのです。そのためには、個々の営業のスキルやマインド、流通の仕組みや取引制度、営業組織を変えていくことが必要になります。では、いかにして変えていくか? そのために必要な考え方やノウハウがまとめられた『営業戦略大全 世界レベルの利益体質をつくる科学的ノウハウ』宮下建治(ダイヤモンド社)から抜粋してみました。

基本的な「聞き方」の作法
営業といえば、とにかく話さなければいけないと、一方的に話そうとする営業パーソンがいます。しかし、それではバイヤーは耳を傾けてはくれないものです。
こうなると「聞いてもらえているのかな」と不安になるし、「こいつは全然わかっていないと思われてしまうのではないか」というスベった状態を想像してしまいます。
ですから、自分がしゃべっていることがバイヤーの関心にしっかりつながっているのか、バイヤーの思いに本当に根ざしているのかを確認しながら、石橋を叩きながら話を進めていくのが、本来の営業の話法です。
「SPIN話法」は、そんな営業にとって実践的で有効な対話ツールです。この手法を使いこなすことで、バイヤー(顧客)のニーズをより深く理解し、効果的な提案につなげることができます。
「SPIN話法」は、4つの質問からなります。
1.Situation/状況質問:
顧客の現状や背景を理解するための質問で、顧客の業務環境や課題の全体像を把握する
今の状況を知るための質問です。深掘りはせず、どうですか、と聞くのが状況質問です。今、バイヤーが置かれている環境だけをサクサクと知るために聞くもの。
注意すべきは、簡単にYES/NOで答えられないオープンエンドの質問を使用し、詳細な情報を引き出すことです。そうでないと、YES/NOで会話は終わってしまうからです。また、唐突に質問を始めるのではなく、前置きをした上で質問に移ります。
事前調査は不可欠で、こちら側に有利な会話を進めるための質問などを事前に整理しておき、予備知識を活かして質問します。やってはいけないのは、不勉強な質問です。こんな基本的なこともわからないのか、と思われないよう、ある程度、勉強した上で質問します。
業界の基礎的なことまで質問すると、顧客の負担となる上、重要な質問に至るまでに不信感を抱かせてしまう可能性があります。もとより状況質問に時間がかかれば顧客に不快感を与える可能性があり、注意が必要です。
一般的に公開されている情報ではわからないような内容をしっかり聞いていく。商談につながりやすい、商談に関係するものだけを聞いていく。そんな意識を持つといいと思います。
<質問例>
●現在、御社の洗剤売り場ではどのような商品が人気ですか?
●お客様からどのような洗濯に関する要望やフィードバックをよく受けますか?
●環境に配慮した製品に対するお客様の反応はいかがでしょうか?
2.Problem/問題質問:
顧客が抱える具体的な問題や課題を明らかにする質問で、顧客が認識している問題点や改善したい点を特定する
どんな問題があるのか、売上を伸ばすどんなチャンスがあるのか、課題やポテンシャルを引き出すための質問です。
具体的な数字や事例を引き出しながら、バイヤーの抱えている問題や障害、不満をヒアリングする質問を心がけます。また、バイヤーが気づいていない潜在的な問題にも焦点を当てます。現在のビジネス状況に対してバイヤーがどう考えるのか、バイヤーの意思・考え・評価を理解できるような質問です。
立て続けに質問すると威圧的な印象を与えるため、適度に顧客が自由に回答できる質問内容や質問ボリュームに注意が必要です。
<質問例>
●現在取り扱っている洗剤で、お客様から改善の要望が多い点はありますか?
●洗浄力と環境への配慮という2つの価値訴求を両立させる上で、何か課題を感じていらっしゃいますか?
●在庫管理や陳列スペース、バックヤードからの品出し作業に関して、何か困っていることはありませんか?